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[ふと、大部屋に誰かが入ってきた。
声のする方をゆるりと見ればそこにはユノラフの姿。
なんだ、君か。と淡白に反応を見せれば彼はどうして昨日ダグを止めたのか、と聞いてきた…が、どういう風の吹きまわしか礼を言われた]
…奇妙な事があるものだ。
まさか君に礼を言われるなんてね。
先に言っておくが僕は君やイェンニを助けようとして止めた訳じゃない。
…“彼女”を殺すにはまだ早いと思ったからだ。
[態とらしく彼女、と強調させる。
そう言えば彼は気付くだろうか。
それともまるで殺す予定があったかのような言動にまた棘を覗かせるだろうか。
ユノラフの不器用な礼は虚しく散る]
…それでも、お前のお陰で死なずに済んだのは違いねぇだろ。
[ニルスの言葉に、ち、と舌を打ち、苦々しく、ぶっきらぼうに呟き…
真っ直ぐに、彼の目を見据える。ぴりぴりとした、棘を纏わせて]
…イェンニを殺す気か。
[それは答えの分かり切った、問いかけ]
[これはこれで面白いものが見れた、とニルスは舌打ちをしながらも礼を否定しないユノラフを流し見る。
それでも言葉の意味には気付いたようで。こちらを見据える瞳を跳ね除けるように冷たく彼を見返し言う]
ああ、勿論。
君も既に知っているんじゃないか?
…彼女がナッキだと。
[ニルスがそれを考えたのは、この雷雨が始まり出した頃。昨日で言おうとしていたことを、今呟いた]
知っている。
だが…イェンニは殺させない。
[彼女がナッキだと分かった今でも、その思いだけは揺らぐことはなく]
もし、イェンニに何かしたら、俺がお前を殺す。
[抑揚もなく、静かに告げて。
どうするべきなのか、答えは出ないまま――否、すべき事を認めることが出来ないまま、男は大部屋を後にした]
[これは驚いた。ナッキと知っていながら殺さないとは、この男は何を考えている?
ニルスはふと口元を緩ませ、馬鹿にするように態とらしく振る舞う]
おお恐い、恐い。
ナッキを放っておいて人間を殺すとは、滑稽なものだな。
[本当に、人間とは馬鹿な生き物だ。
自身を殺すと宣言したユノラフが部屋を出て行こうとする間際、少しばかりの言葉をかける]
イェンニはどう思うかな?
彼女が死にたがっているようなら、僕は喜んで彼女の心臓を止めてやろう。
…さて、マティアスとイェンニ。
君がその天秤をどちらに傾けるか、楽しませて貰おうか。
[そして雷雨に混じり、馬の少しばかり弱った嘶きが聞こえれば]
それと君が殺したダグへの罪償いをしたいと思うなら、あの馬に餌でもやったらどうだ?
[まるで自分は面倒だからとでも言いたげなように、付け足して後ろ姿が小さくなっていくダグの背中に*言った*]
─昨夜─
[そっと離れる体温を見送り、ユノラフの言付けを
伝えるためにマティアスの元へと向かう。
2階ではマティアスが一人、友が戻るのを待っていただろうか。]
ユノラフさん、シャワーを浴びに行かれましたよ。
[彼は頷いてそこで待つと言っただろうか。
…も、用が終わったので下に戻っても良かったが、
ふと、気になった事を口にする]
あの……失礼でしたらごめんなさい。
何も見えないというのは、どんな感じでしょう?
[盲目の世界とはどんなところだろう。
昏い、水底のような、そんな世界かしら。*]
─クレストが使っていた部屋─
[誰もいないがらんどう。
鍵がかけられていなかったのだろうか、
窓がキィキィと風に揺られて音を立てている。
降る雨がベッドを濡らしているから、
この部屋ではもう寝られないだろう。
部屋の隅に、ひとつ、置き去りの上着>>3:240。
ポケットから覗く紙を手に取ればそれは写真だった。]
ミハイルさんの、
[>>3:71今と寸分たがわぬミハイルの顔。
古い、旧い、とても昔の写真。
違うのは着ているものと、今よりも少し柔らかい表情だろうか。
もう一人映っている少年は、彼と共に逝った
青年にどこか似ているような。]
[必要が無いから置いていったのだろう写真を、
…は上着に戻す。
そして、もう一枚、写真とは違う紙が無造作に
押し込められていた。
その紙を取り出して何が書かれているのかを、見た]
『
Rusalkaがしあわせになれますように Vodyanoi.
』
[瞬間。
目の前が、真っ赤に染まる。]
[なんて言葉、なんて残酷、そして絶望、慟哭。]
私には、あなたのようにはなれない、
愛してくれる人も、愛した人もいないのに!!
[クレストと二人、幸せそうだった2人を思い出す。
ミハイルは仲間である…よりも、ただの人間を取った。
妬ましい、羨ましい。
自分には訪れることの無いだろう幸福。
それを二人に預けて、諦観したのに。]
いまさらこんな、ひどい、ひどいひどいひどい!!
[ぐしゃりと紙片を握って、その場にしゃがみこめば、
呼応するように雨音と風が一層強まり、空は悲鳴を上げる。
…の声は、ざぁ、と降る雨がそれを掻き消しただろうか]
おいていかないで ひとりにしないで
[苦しい、哀しい、怖い、寒い、切ない、辛い。
寂しい、寂しい、寂しい、さみしい──
ぐちゃぐちゃになった感情を曝け出す…は、
それこそ化け物の様に醜かっただろう。]**
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