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[廃校間際の校舎に、わざわざ取りに来るほどの早急必須なものなど無い。
ただ単に歳に似合わず持ち合わせた好奇心が、押さえられなかっただけだ。]
逢魔時が交わる辻が四つ。だから四辻村って捻ったものだね。
[祖母から枕許で聞いた言伝。
道の両脇に四つ、積み上げた小石が村の目印だという。]
ひい、ふう、みい…一つ減ってるじゃないか。
[油の切れ掛かった自転車の音と、掠れたラジオノイズ。
そして立ち去る村の青年を見送る。
彼の記憶では、この小石の数はどうやら正しいように伺えた。]
― 四辻村・民家二階の一室 ―
とぅららん♪
とぅら らぁ〜♪
[閉め切られた室内。
そこでなおも、鼻歌が続いている。]
[やがて。
閉じた窓のカーテンに細い細い隙間が開き、
片目玉がおもてを覗いた。**]
[四辻村に来る以前、ノギは都会の若者だった。この地方に伝わる幾つかの噂・伝承をオカルトサイトで見た事もあった。確か名前は「グッナイ★ムーンライト」
廃墟や幽霊スポット吶喊の投稿で成り立っていた為、そんな名前が付いたのだろう。名前からすれば、雑誌トワイライトの中の人が作成していた可能性もあるが。
兎も角も、曰くつきな場所だとは思い、更に先日赴任してからは、村内に土着宗教と思しき集会場のような場所もあるのだから、心安らかには在らず。
所詮逸れ者、会話を交わしたとしても、村民の目に覗く「部外者」という無言の声には、未だ慣れぬ。]
[更に…]
[宗教関係だの山からの贈り物だの言い包められたが、あの赤い水は鉱山の名残りにしては赤すぎるように思える。気のせいだろうか。]
今宵、村で重要な事があると言われたが、
果たして好い物であろうか。
[嘆息こそ吐かねど、
ノギの胸中は理由もなく暗澹としている。**]
四辻村
[それから男――名を来伝龍一といった――は四辻村に到着した。そして今は、村の中を歩き回っていた。並ぶ古い民家。人がいる気配は確かにあるが、その姿はざっとは見掛けられない。携帯は圏外になっている。
典型的な寒村、といった風情だった。
辺りを眺め、時折デジタルカメラで写真を撮りながら、人の姿を探して歩き]
……ん。
[道路に沿って中央へ向かっていくと、川が見えてきた。その水の色に、瞬く。血のように、赤い水]
……成る程、いかにもだ。
[少しく胸がざわめいたのを覚えながらも、小さく笑い。赤い川を撮ってから、脇にある井戸を*覗き込んだ*]
― 四辻村・民家二階の一室 ―
ぴったごーら っす♪
―――――…………
[おもてから耳慣れぬ声がする。
そちらへ意識を惹かれた女は、鼻歌を中断して動いていた。
マーブル柄のカーテンを僅かにめくり、そこから窓ガラス越しの戸外、下方を窺えば、余所者――この村の住人ではない人間の姿がある。]
[少しだけカーテンの隙間の幅を広げる。
次いで戸外へ向けて顔の半分だけをのぞかせるようにして、女は満面の笑みを浮かべた。
[窓ガラスの奥、無音の――
第三者からはミック・ジャガー似と評されそうな笑顔。
それから、カーテンは閉ざされた。]
[民家の玄関の脇に、ネームプレートつきのサビに覆われたポストが備え付けられている。
ネームプレートの氏のところには『穂積』の表示があり、さらに下に幾つか、ここの世帯の人々――この村の住人でもある者たちの名が並ぶ。そのうちの一つ、『穂積 美津保』が女の名である。**]
―四辻村・井戸―
[雑誌記者たる来伝龍一氏が近づいた井戸の周りには、
白い軽石が水はけ良いように敷き詰められていた。
脆い石はじゃり、と軋んで身を減らし、音を立てる。]
……。
[だから、彼が覗き込んだ井戸の壁にへばりついていた
少年の面は能面のようで…驚愕は浮かんでいなかった。]
おじさん、どこのヒト
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