じいちゃんはいるって言うけどな、人狼。
まあ俺は見たことないし、熊のが対処できて助かるけど。
あ、そうだ。俺、バクだよ。
じいちゃんと一緒にマタギやってる。
[幸せにふくれた腹を撫でつつ、お茶を待つ間、視線は物珍しそうにンガムラとグリタを行ったり来たり*]
ンガムラ……さん、だっけ。
化粧って、神楽舞のとは違うのか?
ツキハナねーちゃんにもできる?
−食堂−
あら。今上の御代だって、人は亡くなりますわ。
だって…人を殺めるのはいつの世も人ですもの。
[さして深刻な表情でもなしに、
少女は箸を置いてンガムラの言葉(>5)を引き取る。]
きっと、あやかしさまはお怒りになってますわ。濡れ衣だって。
[そう言って、ンガムラをちらりと窺ように見やると
なにくわぬ顔で酒のなみなみと注がれた杯をくいと飲み干した。]
…そんなことより、わたくし思いますの。
[かたん。と膳に杯を置くが少し高い。]
どうして皆々様、
着物をお召しなのかしら?
それこそ大正のこの世に、ですわ。
ねえ、ツキハナおねえさま。
きっとモダーンがお似合いと思いますの。
だって、こんなにお綺麗…なんでふもの。[少しろれつが回らない]
[バクの自己紹介>>12は、大人びた所作に納得する。
祖母もかつて舞手を務めたという神楽舞の化粧は、村を出る前に何度か見ていた。]
舞手を別人に見せる化粧と、そのひとが一番綺麗にならはるようにする化粧。…違いはあっても、根本的には同じもんやね。
ツキハナちゃんに? ええよ、もちろん。
そうそう、土産に見繕ってきた紅、どうやった?
[華やかな紅を思い浮かべてふと微笑うと、ご馳走さま、と箸を置く。]
…おれもゼンジのお茶よばれよ。
ああ、買うてきた羊羹、ゲッカ姉に渡したあります。
[和やかな会話の間も、窓の外を影がちらつく度、自警団ではと表情を曇らせた*]
[普段なら賑やかな食事の席も、今日ばかりはどこかぎこちない。
姉の自慢の料理は今日も変わりないはずなのに]
あんな張り紙さえなければ…
[都会から来た男の言葉に耳を傾け、再会を懐かしむ声に酔い痴れていられたのに。]
――…なきゃ、
[各々の咀嚼する口許を盗み見ては、消え入りそうな独り言を。]
[食事が終わった者も出始めた頃、取り交わされる言葉の端に、自分の名を覚えば(>>12)]
ばばばばばばバクくんっ! ななななっ
[途端に顔を赤く染め上げ、言葉も儘ならなくなり、さらに追い打ちをかけるような発言(>>16)には]
ちちちちチカノちゃん、なにを仰ってって、まぁ!! お酒?!
[飲酒に気付き、さらに慌てる。]
お着物は、お洋服より大好きだから…
[慌てつつもチカノへの疑問へ答えて一息つくも、バクの問いかけに答える化粧師の言葉に、再び頬を赤く染める]
おおおおお化粧だなんて!!!
ンガムラさんからお化粧をだなんて!!
確かに紅のお色は、とても素敵でしたけどっ…
わわわわわたくし、ゼンジお兄ちゃまのお手伝いをいたしますわ。
ゼンジお兄ちゃま、お湯を沸かしますね。
[そそくさと台所へ]
人狼だなんだなんて、嫌なお話。
もうすぐお嫁入りなのに困ったものねぇ。
[空いた皿を盆に片しながら、短くため息。
チカノの席の前まで進むと、杯を手にしばし思案して]
お嬢様?
[後頭部に、軽く手刀]
え、なに!? 出た!?
[自分の言葉に慌てだすツキハナに、びくりとして後ろを振り返ったりするものの、チカノ、ンガムラと言葉を掛けられるたびに声を裏返すから、ただただ瞬き繰り返した]
確かにねーちゃん、洋装も似合いそうだけどな。
帝都の人はもう、みんな洋装なのかな?
[ンガムラと帝都の話をしていたグリタに、首を傾げてみる。
直後、びしりと手刀を繰り出したゲッカが見えて、がたと椅子を鳴らして後じさった]
やましいことでも?
[>>22距離を測るバクに薄く笑ってから、台所へ。
お茶の用意を手伝うツキハナの横に並び、ンガムラの羊羹を切り分けて一人ずつ小皿を配ってゆく]
大分、風が出てきましたね。
隙間風が酷くてお恥ずかしい。
[頬に手を添えて、困り顔で首を傾げた]
あん…
らって、禁酒令は…やぶるはめにはるの…よ
[ふらふらと揺れる三つ編みのまんなかを、ゲッカにぶたれて不服そうに振り返る。返して欲しいと、奪われた杯に伸ばす手もそのままに、がたんっ…と派手な音を立てて少女は膳につっぷした。すっかり空となった三合の徳利が、ころころと転がっている。]
ない!
ていうかふつーに驚いた!
[マタギ、仕事中、酒のまない!
思わず片言になりつつ、薄く笑うゲッカに勢いよく頭を振る。
羊羹とお茶が出てくる頃には落ち着いて、未だ席にある人を見回すけれど]
あれ……そういえばアンは?
[上着から封書取り出すと中を確認する。
名簿の名前、一人足らない]