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……たんない。
[ぽつり、零れる呟きは雨音に飲まれる]
これじゃ、まだ。
『堰』の先に、いけない……。
……ここから、でらんない……。
―― 村の通り ――
[ キコ… ]
[錆の浮いた自転車を漕ぐ。
衣服はまだ着古していないシャツ。幾分首元が、ごわつく。]
… ほ 親方。
こんちは 昨夜は すみませ――
[通りで行き会うのは、キクコの父親。
船頭見習いの男にとっては、花作りの余暇に櫂捌きを教えてくれる
もうひとりの師匠といった人物だった。その彼に聞かされるのは、]
キク嬢ちゃんが 消えた ちな… ?!
[――――朝食後の僅かな時間に、キクコが消えた、と。]
……雨。
[降り出した雨に空を仰いだ。晴れた空。強めの雨足は髪を、服を、濡らしていく。ふらりと、立ち上がり]
……行か、なくちゃ。
誰かに、伝えないと……
タカハル君が、誰かを消そうとしてるなら……
止めないと、……
[よろめくように、一歩一歩、通りを進んでいく。遠目にタカハルの姿が見えたなら]
……、……
[反射的に、立ち止まって]
―ギンスイの自宅―
[取り乱しているのは母親の方で、姉のホズミはそれを宥めていた。その姉も、目は泣き腫らしたように赤い]
母ちゃん、姉ちゃん……。
匿われとるだけじゃて、ヌイが言うてくれたんじゃろ?
そんな、泣くなや。
[夜勤の職場から、知らせを受けて帰ってきたらしい父親は、あちこちに電話をかけている]
父ちゃん、すまん。
ワシ、タカハルの家にも、分校にもおらんし、バスにも乗っとらんよ。
公園にも牛小屋にも花畑にもおらん。姉ちゃんじゃあるまいし。
……てるてるぼーず、てるぼーず。
[小さく紡ぐ、歌]
あーした天気にしておくれ……っと。
[ふと、止まる歩み。
目に入るのは、立ち尽くすようにも見える、セイジの姿]
―駐在所―
うっわー……
[降り出した雨。露骨に顔を顰めた。
座る椅子がギッと音を立てる]
勘弁してくれよ、ほんと。
明日から仕事あんのに帰れんのかな俺。
[雨音の合間に鳴り出した黒電話を、どうしたものかという顔で見ている]
…っ
[「着替えたらこれをお前に返しに行くと言っていた」――
渡されるのは、丁寧に畳まれた見覚えあるサマーセーター。
探すのを手伝ってくれと男へ声をかけ、キクコの父親は去る。
移民の男は、ふる、と一度身を戦慄かせて…ひとりつぶやく。]
きこえん 、 っ…
まだ 、 聴こえん …
[キクコの「声」は。然し、目覚める直前に聞いた気がした
件の悲鳴は、彼女のものではなかったか。男は耳を澄ませる。]
――… ( さやさや )( さやさや )
[祈りのように、何度も何度もホズミの口から繰り返されるのは、ヌイの言葉]
ワシが帰れるようにする、て……
言うてくれたんか。
ええ人じゃの。
のう、ワシは大丈夫じゃ。ここにおる。
痛くも苦しくもありゃせんから。
そんなに、泣くなや……。
[一睡もせずに自分を気遣う家族を、ただ「見守り」ながら、朝を*迎えた*]
[タカハルが、此方を向いた。そして――笑う。くすりと。楽しい、とでも、言いそうに]
……タカハル君、……
[一瞬、凍るような寒気に襲われた。治まりかけた頭痛が蘇る。疑え。疑え。疑え。頭の中に声が響く。疑え]
……ね、え。
タカハル君……だよ、ね? ……
[此方から近付く事はできずに。掠れた声で問う]
[話し声。生きている村人の其れ、そうでない村人の其れ。
足元へ跳ねる勢いの雨音。村内放送のOver the rainbow…
降りしきる雨に、傘を持たぬ男はたちまちずぶ濡れになる。
握り締めたサマーセーターからも、すぐに雫が滴り落ちる。
雨宿りをする村人たちが、移民の男を訝しげに見ている。
…やがて、男の耳へ異変がきこえるのは]
…、? っ…
[ ぶぶ ぶ ]
[積んだトランク――巣箱で白い熊ン蜂が騒ぎ出すのと同時。]
ボタンの 婆っばん…っ
[店の掃除を始めた嫁へと近寄り、
ありがちな番組よろしく、棚の端を、つーっと、人差し指の先で撫でて。]
ダメじゃ。まんだ、埃が残っちょる…
っても聞こえんかぁ、いびりがいも無いわなぁ。
[走り出したタカハルを視界の端で捉え、
その背中を、頼りなげな足取りで追い始めた。]
[手にしたままの、えび茶色の傘の広がりを、通りすぎる雫。
そこに雨音はたたない。]
[セイジの問いかけに、一つ、瞬く]
……そーだよ?
[問いの肯定は、呆気ない]
オレがオレじゃなかったら、何だっての、セイちゃん?
[声に乗る響きは、たのしげなもの]
タカハル……?なんだろ。この嫌な感じ……セイジくん……
[「誰かに、伝えないと……」とのセイジの先ほどの言葉が頭をよぎり]
伝える?……そうだ、伝えなくちゃ!
でも、伝えるってどうやって……どうしよう……
[必死で思考を回転させるがうまく頭が回らない。
必死で考えた末、突然頭に浮かぶ人物は]
……そうだ!ヌイさん……!
セイジくん、待ってて!無事でいて……!
[くるりと踵を返して駆け出した]
あー、おはようございます。
お巡りさんは留守ですよー?
ピーという発信音の後に――
[止まない呼び出し音に観念して受話器を上げた]
え、キクコちゃんが?
[聞こえるのは声だけというギンスイの説明を思い出し]
ヌイさん…!ヌイさん!
どこにいるの!声が聞こえたらあのね、セイジくんが危ない!タカハルは「疑え」とおんなじで、だから……ヌイさん!セイジくんを助けて……!
[大声でヌイの名を叫びながら村の通りを駆ける。
何度も何度も自分の知る事を繰り返し叫ぶ。例えそれが徒労に終わるかもしれなくても、叫びながら*走り続けるだろう*]
……だって……変、だよ。
なんで、そんなに楽しそう、なの?
皆、まだ見つかってないんだよね……?
[リコーダーを握り締める手も、雨で、滲む汗で、濡れていた。雨が体温を奪っていく。ただ、頭と胸の辺りだけが熱く感じられ]
……ねえ。タカハル君は……知ってる、の?
皆が、どこに行ったか……
何が、起こってるのか……
知ってる、んでしょう……?
[問い掛けの最後は、確認に近い調子だった]
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