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[この真夏の季節にも関わらず、マフラーを首へ巻きつけ着込んだ格好。加え、顔を隠すように、帽子とサングラスを身につけている。荷物は持っておらず、空手だ。
そうした風体のレンの、向日葵の中の放浪の時はどれほどであったか。]
―――――っっっ!!
[向日葵の群れが途切れる箇所を、行く先にようやく見つける。
向日葵畑のその途切れ目から、外へと転がり出た。*]
[不意に携帯が鳴る。
電話に出て話す男の顔が曇った]
…なんだって。
渡した地図と紹介状は手違いだぁ?
…仕方ねぇな。
[電話の向こうの相手と暫く会話を交わしていたが。
踵を返し、元来た道へ戻る。
数時間後、来たバスに乗って男は村を去った]
[半袖半ズボン、夏の子供にふさわしい格好だ。
すんなり伸びた手足は日焼けというにはやや色が薄いが]
おじさん、ここのひとやないね。
あたしもやけど。
ひょっとして、迷子?
[蝉の鳴き声。
アゲハチョウがひらりと
夏とは思えない厚着をした男の頭に、止まる**]
懐かしいわ。何年ぶりかしら。
[都会住まいらしい洗練されたファッションに身を包む女が汗を拭きながらつぶやく。]
おばあちゃんが生きてる間に顔見せられて良かった。
へぇー。お祭り。
[神社へと続く参道に、準備中の露店が建ち並ぶのを見てつぶやく。
昔、祖母の家に遊びに行ったとき、1回祭りに行ったことがあるのを思い出すと子供に戻った気が*する*。]
[さほど大きくはない湖。
湖面に浮かぶのは水芙蓉。
――シャッシャッとスケッチブックの上を鉛筆が走る]
・・・。
[まばたきするのも忘れたかのように視線は目の前の景色と紙面を行き来する]
きゃっ……。
[一陣の風が湖面を揺らし、ぱたぱたと踊る紙面を慌てたようにおさえる]
ふぅ。
[通り過ぎた風に一息つくと、我にかえったようにパチパチとまばたきを繰り返す]
ぅ〜ん。
[かたまってしまったような体をぐっとのばすと、何気に時計に目をやる。
――ぱちり、今度は驚きに目を見張った]
[村を訪れたのは昨日。
到着したその日は疲れと暑さにあまり出歩く気にもなれず、涼しくなった夕刻にごくちかくをふらりとしただけだった。
今日は暑くなる前に、と早めに出かけたのだったが――]
…お昼まわっちゃったよ。
あっつ。
[青々とした木々が影を作ってくれてはいたけれど、思い出したようにどっと汗が吹き出す]
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