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[ホズミの腕の中でくてりと眠ったままで]
……どこ さまよ てんのかな
窓硝子にうつ たアレも …駄にな ちゃったし ……
[蔵から出るよりも前に、そんな言葉が小さな口から紡がれるが、それが猫の口からのものだと人間が気づくかは――*]
― 診療所 ―
[待合室のソファで寝ていると、ドウゼンにぴしゃりと額を叩かれた]
……大丈夫だ、馬鹿は風邪ひかないっていうし。
[もそもそ頭を掻く。
肩をすくめるドウゼンに、苦笑を返した]
[もう一度ガラス窓を覗き込むが
暗い雨空の下では鏡のように
ホズミ自身が映っているだけ]
さまよっている何かが、映ってたっていうのかな?
……。
[どうにかしたくても、手掛かりになるのは
抽象的で現実離れしすぎる話と、アンの形見の貝殻だけ]
―― 診療所 ――
[静かな、薄暗い部屋でワカバのそばに居る。
新たに運ばれてきたのは――つめたいロッカ。
扉越しには、つめたくなった者らの親族と
ドウゼンとの涙声混じる話し声が聞こえ。
――その声もやがては絶える。訪れる静寂。
ヘイケは、眉根をきつく寄せて両腕を組んだ。]
……
[診療所のドアをがらりと開ける]
……こんばんは。
[フユキの姿を確認すれば、
ロッカについて語る事は既になく。
しかしワカバの顛末を聞けば]
――ワカバちゃんも、ですか!?
そう、ですか。
[短い返答。
心が少しずつ麻痺してきてるような、そんな気がした]
此処にこうしてあり続けることに意味があり。
[右の掌を見て]
何かが足りないから雷神さまが怒っている。
[左の掌を見る]
両方同時に成り立つんかね、ロッカ。
[答える少女は、もう居ない]
[待合室に姿を現したヘイケに、小さく右手を挙げて挨拶して。
次いで診療所を訪れたホズミに左の手を挙げる。
ワカバの顛末を聞いて言葉を失うホズミに、自分も押し黙った]
…わらうことが出来なくなるわけでは、
[視界にはフユキがドウゼンへ向ける苦笑。
耳にはウミを抱いてきたホズミの僅かな声。]
ことばが尽きるわけでは、
ないのね。
[ほろり 感慨を漏らしてから其々へ目礼を]
[ホズミの腕に抱かれてやってきた診療所。]
幽霊なんていないと思 ていたのだけど。
合理的に考えて良いのかな? これ?
何か僕たちのルールの外の話な気がする。
[眠った猫の口から紡がれるそれは、誰かを彷彿とさせる語調で]
足りない足りないってロッカちゃんは言ってたけどさ。
……結局のところ、何が足りないって言うんだろうね。
みんなの――あの状態とか見れば
雷神様が怒ってるってんでも納得するしかないけど。
[フユキとヘイケに問いかけるように]
考えてはみたんだけど、
人と海と柿ぐらいしか思いつかないわ。
ロッカ―――
彼女は何か別のものを夢と表現しているように思った
不謹慎な事実を「大丈夫だよ」では済ませない自信と 「今まさに何か見ているような素振り」
…… て、彼女の確信は何故だったのか。
[しっぽがぴくりと動く]
まあ そーだよね。
いきなり えっと……アンちゃんと、ケンと、ロッカちゃんと あたし。4人立て続けにコレだもんね……
[今度は先ほどとは違う誰かを彷彿とさせる語調の言葉が紡がれる]
きれいよ。ワカバも。
[ワカバの「状態」について短く触れる。]
カミナリは、落ちた。たぶんね。
でも、カミナリに打たれたのではないわ。
[アンも ナオも ワカバも火傷ひとつない]
カミナリにしても雷神さまのお怒りにしても
仕方が無い、抗えない、
…そんなふうには、どうしても思えないの。
[ヘイケの言葉に、瞬きして。
もう一度、苦笑して見せた]
人と海と柿か。なるほど。
[ホズミの言葉の問いかけるような言葉に、眼鏡を拭きながら答える]
しかし人が足りないっていうならこの有様は……ん? なんか言ったか?
[ホズミの方から、ホズミのものではない、声]
……え?なに? ワカバも!?
[ぴくり]
あたし、このまま燃やされちゃうんでしょうか。
[ぴくり。むずむず]
アレか。狙われてるのは若い男女かっ!?
[ぴくり。しっぽをぶんっ。]
もしかしたらナオちゃんとケンケンも?
[ぴくり。しっぽぶんぶんっ。]
何かを求めてたのは、ロッカちゃんなのかな。
[ぴくぴくり。しっぽぶんぶんぶん………]
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