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だったらえぇのになー。
[一緒に空を仰いで。]
もし、うちらでいけるんやったら、一緒いってくれる?
菊ちゃんみたいな素直で可愛ぇ子と…一緒に夢ぇ追えたらえぇなぁ思うねん。
多少メカに強いくらいでどうにかなるもンじゃねェよ。
訓練受けてるオレでさえ…。
[苛立った視線を機械に向ける。
尋ねられ、自然と口は重くなる]
あァ…。……火星の宇宙事業にはな、ちょっとした組織抗争があンだ。
オレは、日本の組織の人間で……。
[重く息を吐く]
悪ィ。アンタを巻き込んだの、オレかもしンねェ…。
あのさー……。
何で私ここにいるんだ?
身に覚えがないんだが。
[ヨシアキと同じように、トーンは徐々に落ちていく]
覚えっつーか、記憶がおかしい。
その抗争に巻き込まれてぶん殴られて記憶喪失か何かか?
[はは、と笑う声はかすれていた]
それも、思い出せねェよ。
…船医として、呼ばれたンじゃねェの?
[適当な口から出任せ]
二人して記憶障害なンざ、故意だろォな。
JINROに敵対してるどこぞの組織にナノマシンでも射されたかァ…?
……はッ。喋ってても埒があかねェな。
この船の構造には覚えがある。
食料庫漁りに行くが、どォする?
説明いンなら、ついてこい。
道すがらで、かつ、教えられる限りでいンなら、少しは話す。
[そう言って、部屋の外へ歩きだそうと*する*]
何だよJINROって。
大体、宇宙に行きたがる医者なんか他にいくらでもいるだろ。
何で私が。
[考え込んだが、心当たりなど浮かぶはずもなく口を閉じる]
食料があるなら、しばらくはどうにかなるか。
酸素ボンベとかあんの?
[部屋を出て行くヨシアキの*後を追った*]
[それは菊子と若葉が連れ立って部屋を出る数分前の事。クルミは若葉と芳秋の痴話喧嘩を横目で見つつ]
結城センセー、それを言うなら「痴話喧嘩は水星人も食わない」ですよ。
[ちゃっかり訂正なんぞを入れていた。]
ふ〜ん、でもおかしいですよね。わたしが特選(以下略)を戴いた時には、見回り係の話も通じていたんですけども…。
[結城が携えた戦利品の赤福をしげしげと眺める。何処か釈然としないものがクルミの心の中を渦巻いていた。]
事務局長、物忘れでも始まったのかしら?
[指に付いた餡子を舐め取っていると、若葉を誑し込んでいた(?)芳秋と結城が放送によって呼び出され部屋を出て行く。
そして転校生同士ということで意気投合したらしい若葉と菊子も部屋から出て行くのを見送り]
そして誰も居なくなった…。なんて。
[季節はずれの天道虫に興味がなかったのか。クルミは一人残された部屋で古いファイルを取り出し、眺め始めた。]
へぇ、随分面白い記事…。
[クルミが取り出したのは新聞記事を切り取りファイルした物だった。
その内容は火星探査宇宙船「かなた」と「こなた」の打ち上げから始まり、こなたから送られてくるデータ、そしてかたなとこなた以降、火星探査は尽く失敗している記事までずらりと並べられていた。]
ニッポンの宇宙船だけ探査に成功しているって変な話よね。何か裏でも有るのかしら? ニッポンだけが火星人に賄賂を贈っているとか。
[まさかね。
そう呟きペラペラと捲るページの下、埋もれるように書かれていた【JINRO】の文字に、果してクルミは気付いただろうか?]
[残り一個の赤福を頬張っていると、前触れなく実行委員室のドアが開いた。]
えーと…事務局の人ですか?
[静かに入ってきた、見たことの無い人物に、クルミは目をぱちくりさせて尋ねる。]
[クルミの問いに、相手も不思議そうな顔をして尋ねてくる。
事務局とは何ぞや? と。]
事務局って…あれでしょう? ほら、見回り係…
[言った途端に相手の表情が曇る。ふとクルミの脳裏に先ほどの結城の言葉が蘇ってきた。]
『見回り係の名簿なんて存じ上げませんが?
手紙?何のことでしょう』
あの、おじさんはこの手紙に見覚えは…?
[近くに置いていた通知書を手渡す。
一瞬の間。
中年の男は首を横に振りただ一言こう言った。]
『学園ではこういう物は一切出していないですよ?』
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