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[遊具に一度視線をやって、ふるりと頭を振る]
......雪、は、ちょっと食べると冷えすぎるかな。
あ、でも...
[どこかへ飛んでいきそうな思考をつなぎ止めるように、話し続けながら、雪の上に片手を乗せる。じん、と感覚が無くなるくらい冷えてから、その手で、そうっと、モミジの額に触れた]
こうすると、気持ちよくないですか?熱っぽい時って。
[冷静になれば、ほぼ初対面の女性に対して、相当に無遠慮な事をしているとは思い至れただろうけれど、今はどうにも「普通」の感覚が遠かった。
まるで、周囲から散々に変わった子だと呼ばれていた、子供の頃に戻ったように]
雪って、冷たいけど、優しいですよね。
雪の精みたいに......
[そうだ、オーロラの輝く国で優しい雪の精が色々な人に幸せを運ぶ、そんなおとぎ話だったっけ**]
[また、ふる、と首を振る]
……わっけわかんなすぎ。
[ぽつ、と零れる呟きは少しだけ苛立ち混じり。
眺めていた雪山に睨むような視線、向けて。
足元の雪を蹴っ飛ばしてから歩き出す]
つーか、一方的に呼びこまれた挙げ句にこれって、マジめーわくだっての……。
[ぶつぶつと呟きながら歩いて行く。
行く先は、特に定まっていないまま]
[開けた場所を歩いてみる。
まっさらな新雪には足跡ひとつ無く、男が歩く度にその軌道が記される]
……ドッグラン…。
[柵に囲われた広場には犬用の遊具がいくつかあった。
高校の時の通学路にあったドッグランに良く似ている]
………
[犬を遊ばせたことは無かったが、通る度に駆け回る犬達を眺めていた。
ドッグランを駆け回る犬達はいつも楽しそうだった]
[けれど]
……あの犬は、どうなったんだったかな。
[沢山の犬が集まるドッグランは、楽しいだけの場所ではなかった。
飼い切れなくなった飼い主がドッグランで犬を遊ばせたまま迎えに来ない、なんてこともあったのだ。
餌も得られず、気付いた時にはよれよれで隅に伏せっているのを見かけたこともある。
その時はドッグランの管理者に伝えて対処してもらったのだが、どうなったのかまでは聞いていない]
獣医ではなく、動物達を助ける道……。
[ここは、男が目指そうとした道の切欠]
[モミジの具合が悪化しているとは露知らず、ドラッグストアでもないかなと街を歩いていく。
どの建物の扉も開かなかったが、どれほど歩いてからなのか、とあるガラス戸だけは違った]
開いた……
おじゃまします?
[足を踏み入れたそこは、かび臭い骨董品屋だった]
[雪の積もる商店街を歩く、あるく。
そういや昔、これと似たような状況になった事があったような気がした]
…………。
[あの時は、確か。
何か、探してて。
でも、中々見つからなくて、それから……それから?]
……いや、だから。
[幾度目か、足が止まる]
……兎の手伝いなんかしなくて良いって。
[何かがそう、ココロを侵蝕する。
見なくていいよ、雪に閉ざしてしまおうよ、と]
…………大体、たからもの、なんて…………。
[もう、ない、はず。
なんだから。
自分に言い聞かせるみたいに呟いて、また、歩き出した]
[鍵がかかった陳列ケースを割ることも考えたが、中にあるのはやたらレトロな風合いの人形ばかりで、役に立ちそうなものは見当たらない]
冷たくなっちゃったな。
[思わず拾ってきた焼き芋の袋が、鞄の中から覗く。
外に降る雪のひとつひとつが大きくなっている気がしてため息をついてしまった]
.........
うわっ!...す、すみません!
[ふいに、我に返った]
何か俺、すっごく失礼なこと...!すみません、急に子供の頃のこととか思い出しちゃって!
[わたわたとモミジの頬に触れていた指を引っ込めて、落ち着き無くに空中で握ったり開いたり......思いっ切り動揺している*]
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