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……もし、人狼としての目覚めが意識的なものではなく、それこそ夢遊病のようなものであったとしたらそれは、人狼本人にも自らが人狼である、と分からないということになる。
つまり、例えば俺が人狼だったとしても、俺自身はそれに気付いていない、という可能性もあるということだ。
そもそも、ここに集められたのが人狼であると疑わしき者ばかりだと言うなら、きっと誰が人狼に目覚めてもおかしくはなかったんだ。
[パタンと音を立てて本を閉じ、ニルスは床に寝転がる。
目の前に広がる天井をぼんやりと眺めたまま、普段より幾らか砕けた口調で話す。
言い聞かせるものでも、説くものでもない、ただ思考を垂れ流すだけの言葉。]
苦悩の内にあるのは何も人間だけではない。人狼に目覚めた者も、きっと同じだ。
此処にいる者を欺き、殺さねばならない。それはきっと、辛いことだろう。……早く謎が解ければ、より早く苦悩は終わる。
その為にも、もしお前が見極める者なら……絶対に、死ぬなよ。
[最後に願望を添えて、ベッドに背を向けるように寝返りを打った。そのまま振り返らず、眠りに落ちるまでニルスはじっとしていた。**]
[投票箱に、紙が入れられていく。
その中に書かれた名前が開かれる]
処刑するの、ですよね。
わたくしたちを殺す為に――
[多数の票が集まったものを。]
死なせない
――…って、言ったでしょう。
[彼はゆるく笑って答える。
イェンニの願いに対応するものではないが]
それに、それなら、
僕が選ばれたら、殺してくれる?
――なんてね。
[最後は少し、からかうように笑って**]
[居間で行われる投票は、翌朝、開かれる。
だから一度は自室へと引き上げることにして]
ユノラフはニルスと一緒におるのか。
まあ、気をつけるべきだしの。
[二人へと一度視線を向けて頷き。
日が暮れる頃には自室へと上がっていった]
おぬしらを疑うものはまだおらんだろうて……
[小さく笑う。
夜になれば、また腹が減る。
食べようかと考えたのはウルスラだが――]
イェンニは、どうする?
[静かに、問いかけた]
[夜が明けるにはまだ早い時刻。
暗い屋敷の中は明かりをともさねば歩く事も難しい。
それでも、目が覚めてしまえばそれ以上寝ても居られずに。
居間へと降りて]
……どうなった、か。
[投票箱へと視線を向け。
中身を取り出す。
一枚。4枚。4枚。
かかれた名前は三人分]
ふぅむ……
[自らの名前がかかれた紙に視線を落し。
それから、同じ数だけそろった二人の名前を見る]
――おや、アイノ……
[そんなとき、投票が気になったのか。
名前をかかれた娘が降りてきた。
寝たのか、寝ていないのか。
それは分からぬままに――投票の結果を見た娘の反応に、わずかにため息を零し]
そうさな、お前さんの、名前だ。
どちらを、えらぶのかって……?
[さぁて、と首を傾げる。
娘が死にたくないと逃げるのなら、それはしかたのないことだ。
けれど――逃がす事のできる場所など、この屋敷の中にはなくて]
……クレストとおまえさんと。
どちらか、なんて、なぁ……
[ちいさな吐息を零し。
どちらかに、かたよっていれば、まだ。
決断はたやすかったのに。
そうでないからこそ。
怯え、恐れ、そして反抗へといたる娘の行動をみやり]
……恨まれてやるから。
向こうへ、先にいっておいで。
[今におかれた果物ナイフを手にした娘の手を捻り。
奪い取ったナイフを、そのまま、娘の咽喉に刺した]
かわいそうに、なぁ……
[止したナイフはそのままに、傷口から溢れる血の匂いをかぐ。
息耐えるまで、腕の中で抱きとめ。
二階へと、つれて上がることはできなかったから。
居間の隣にある、遊戯室のソファーへと、ねかせにいく]
こうして、投票が成されるのならば
人だと言われた人から…と、わたくしは思います。
もしまだ、ヴァルテリ様やレイヨさんが
見極める者だ、とおっしゃらるるのであれば
他の見極める者は被害にあわせては
疑われるかな…などと考えておりました。
[勿論、そのつもりが無いならば
見極める力持つものから―――とは思うものの]
とは、いいわけで…
実の所。
先程の怪我の治療から。
マティアス様の血の匂いが
頭から離れないのですわ。
[喉を手指が滑り降りる
恍惚の表情―――喉の乾きを癒したい]
…レイヨさん、が選ばれたら、
きっと…
手にかけようとするひとを。
喰い殺してしまいますわ。
[狂うた人と言われるだろう彼への返答は
ひどく、沈んだ声となった]
― 夜 ―
[いいわけだと、そう紡ぐ若い狼の声に小さく笑う]
ああ……たしかに。
あの血の匂いは、な……
[その気持ちは分からなくもなく。
ゆるりと頷いて]
ならば、食べてしまおうか。
[怪我が酷いマティアスを。
人だといわれた者を]
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