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・・・・・・
[そのまま沈黙。
なんだかこちらが悪いことをした気分だ。
いや、実際、彼は見ていただけなのだから、何も悪くないのだけど。
完全に八つ当たりなので、むしろこちらが謝るべきなのだけど。]
…っ
[ごめんなさい。
喉まで出かかった5文字を、結局飲み込んで。
慣れた手つきで車椅子のハンドリムを回しながら、そのまま図書室の出口へ向かった。]**
[まあいいか、どうせもう話すこともないんだろう。
クラスが同じというわけでもない。
ただ、よくここを使うというだけだ。
ここはお喋りをする場所でもないし、自分は基本的には寝ている。
話しかけられるということはほぼないだろう。
また机に伏せりながら、元の静けさに戻ったそこに一つ息をつく。
息苦しい空気から抜けられた安堵感と反して、胸中には小さなしこりが残った]**
悪いけど、コレ
あたしンだから
[摘み上げた指先には、
夕焼けの染みる白い封筒。
無事わたしの手元に返ってきたコレを持って
眉を八の字にしながら吐き捨てた。
八の字。勘違いしちゃいけない。
わたしの八の字は困り顔なんかじゃない。しかめ顔。]
[ちょっと声が大きかった気がするけど、
そんなことは些細なことだ。
……たとえば、勉強してる人、
ほかには、図書委員とか? 寝てたりする人?
そういう人にとっては全然些細なことじゃないだろうけど
九死に一生状態のわたしには、ともかく、些細なことなのだ。
だからわたしは逆に、
ある意味有名人とも言える彼女――
車椅子少女の周辺で起こったことは意識する余裕がなかった。
摘み上げた指先が震えないように
ぎゅっと力を入れながらクラスメイトのいる机から離れる。
離れて、本棚の陰へ、逃げ込んでしまおう。]
[ぐるりぐるり。
回る世界を見るのにも飽きてきて、足を止める。少しふらついたけれど、大丈夫。私のこういうところを、友達はときどき呆れるみたいに見てる。私は呆れられる、理解されない孤独さが心地良くて、たまにわざとこういうことをしてみる。友達が少ないのはこんなところに理由があったのかも。
足音が聞こえたように思って、くるくるする目を向けてみる。赤みがかった髪をしたあの子は、時折見る――いや、それよりこっちに――]
[どしん。
身体に衝撃が走った。
あ、倒れ――ない。今まで自分で思ってたよりも、私って丈夫だったりして。それよりも、ぶつかってきた相手が気になった。立ち尽くしたままか、転倒したか、ともかく少女の方へ向く。]
…………大丈夫?
[顔を見ようとして、先に。彼女の手元が夕方の空気の中、目を刺すように白く――]
[封筒?
図書館で、封筒?
この子は何だろう、たまに見たことはあったと思うけれど、図書館に封筒を持ち込んだりすることってあったかな? それに、こんな辺鄙な本棚の間に来た勢い。
この辺りには、本棚を見たら統計学とか財政って本が並んでいる。私は本の分類については全然知らないけれど、これって人気のある分野じゃなかったよね。
私は相手を心配するよりも、顎に手を当てて、ふうむと考えてしまった。名探偵ごっこ、なんちて。**]
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