[鋭い痛みから鈍い痛みに変わり余裕が出てきたのか。
腹を押さえながらよろり、と立ち上がる。]
うわっと……
[ぐらんぐらんとしながら足を進める中、救急道具と称した道具箱に足をとられた]
とっ、とっ、とっ……おおおおっ!?
[バランスを大きく崩してふらつき、
倒れているンガムラの足に盛大に引っかかり
大きな音を立てて倒れた。
倒れた瞬間、手は杏の腕のあたりに強く当たって、その体を大きく揺らしたかもしれない。
倒れた衝撃で再び腹部が激痛。また立ち上がれなくなった。]
……うう……
[バクが倒れた衝撃か。
ほんのわずかに、そこから声が漏れる。]
こ、これって……
どういうこと……?
なんで、あたし……
のっぽ。
おまえもか。
おっさんは詰めが甘いな。
どれ。どこをやられたのだ。私に診せてみろ。
[その男もまた呻くような声を挙げた。
歩み寄ってのっぽの身体を跨ぎ、仁王立ちすると。
身体を屈めてその服をひんむきはじめた。]
イマリ くん ぶじか ?
[近くにいるかはわからない娘の名を呼ぶ]
しょうぶは どう なっ た ?
[勝ったか、負けたか。
自分は、騙されたか。
今残る興味は、それくらいだ]
ははは。のっぽ!
ナイフが幅広だったのを悪魔に感謝するといい。
傷口は…
おまえの二本の肋が受けとめたようだ。
肺は傷ついていまい。それだけ喋れるならな。
…運の良いのっぽだ。
[ひんむいたのっぽの胸から夥しい血が流れ落ちている。
しかしそれは、まるで少女の表情のように明るく軽く、それが静脈からの出血だと知らせていた。少女は両手わきわきさせて言う。]
さあ。他に傷がないか調べてやろう。
…おまえは守りすぎなのだ。
逃げる?ばかな奴め。のっぽ…
その傷の対価を得ねば、一生祟らるぞ?
―― 数日後・某集会所 ――
おっちゃん、安らかにお眠り下さい。
[なむなむ、と念じながら、受付で渡された白い封筒の口を開く]
……え?
[御礼状だと思った中には、タロットカードのような何かと、絵柄の説明が書かれた小さな用紙。
村人を示すそのカードを慌てて伏せて、あたりを見渡す]
『それでは時間となりました。
ただ今より――』
「受付にいた男性が室内にやってくると、そう告げた。
室内にいるのは、8人。
壁時計は、12時を報せる――**]
[鍵は開いたのか、お宝は見つかったのか、
もう意識が薄れているから認識できない。
この手で殺したはずの相手の声がするのは、きっと気のせいだ。
気のせいじゃなければいいなんて、身勝手に願ってはいけない。
チカノの言動を勝手に誤解して、真偽も定かでは無いお宝の言い伝えに欲を出して、しょうがないおっさんだなあと自分を笑う。
視線を感じる。たくさんの猫の置物からの、色とりどりの視線。
赤い目の猫は、早く自分の命を喰らいたくてうずうずしているのだろうか。
俺はサンマじゃねえぞ、なんて見当外れの台詞が、おっさんがこの世で最後に考えたこと**]