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…わかンね。
けど、やべェし。
[背に飛びついてきた相手がアイノと知ると、
ペッカは眉根を寄せて片腕を其方へと回す。
剣呑さを高める村衆の視線からアイノを隠す態]
ちっとは、聞いたろ。
ドロテアの仇を討ちこそすれ、
喰い殺した犯人にされるなんざァ、真っ平だ。
[はぁ、と僅かに吐息をこぼす。]
いったい、どうしろってんだよ……
[アイノがやってきたのを見る。
ペッカやウルスラ、ラウリへと視線を移して、もういちどため息をついた。]
俺らの中に犯人が居なかったら住人全員殺していく羽目になるぞ。
それでも――
[『やる』とドロテアの父親の声が重なれば顔を蹙めた。]
返して。
あなたに出来ないなら、師匠でもなんでも呼んで、ドリーを生き返らせて。
[声を荒げることもなく、淡々と、ラウリへ向ける言葉を紡いだ。]
へーえ、いの一番に罪を着せられかねねェ
立場っつーのはわかってるみてェじゃねーか。
[ラウリの饒舌さにさも感心するといった調子で、
ペッカは太い指でラウリの額を押遣る仕草をする。]
いきなり弁解から入るところが凝ってらァ。
[取成す語調のウルスラの顔を立ててか、
ペッカはラウリをそれ以上挑発するのはよした。
――そして、>>32背へつくアイノが
呼気と共に腕へ籠らせる呟きを感じ、]
…、お前ェ。
[問う間も挟まずに、否定するアイノの言に
ペッカの元から腫れぼったい瞼がひとつ瞬いた。]
……人を生き返らせることなんてできたら、それは手品じゃなくて魔法ですよ。
[水夫のように敵意をぶつけてくるならともかく、少女の言葉は予想外だった。]
僕にはできませんし、師匠にも無理です。それに……
[一度言葉を切った。]
奪ってないものを、返せと言われるのは心外です。
[彼女からよくわからない圧力を感じたから、丁寧に言葉を紡いだ。]
くそう。
結局誰かを生贄に差し出せってことだろ。
それで他の誰かが襲われてたりしたら、また別の奴ってことだろ。
[おわりが見えない凶行じゃないか、とはき捨てる。
ペッカとアイノ、ラウリのやり取りも聞いてはいるけれど、そちらに反応できるだけの余裕もなく。
ただ――そう、ただ純粋に、町の人じゃないと言う理由だけでラウリはすでに不利だとは、思ってはいたのだった。]
死んだ婆様は、あたしとドリーが、森の奥の小さな家に行ったときに、教えてくれました。
この辺りには昔、人狼というバケモノがいたんだ。
人の姿に化けているから、すぐにはわからない。
どうやって見分ければいいのか、おまえたちにだけ教えてあげるよ。
[そこまで言うと、あとには鼻をすする音。]
…。
[水夫のペッカは、自らの喉元をがりがりと掻く。]
この中に、犯人が――
ビー、あながち的外れでも無ェかもしンねえ。
[やや思い詰めた様子で、ベルンハードへ言うと
――腰の後ろへ片手をやってごそりと探りだす。]
何なら、俺がちっと視てやっても いいし。
[水夫が取り出したのは、古い――旧い、望遠鏡。]
[水夫は...を疑っている。帽子の女性も「やる気」だ。他の二人はわからないけれど、顔なじみを突き出すよりは、旅人のほうがずっとやりやすいだろう。]
っ! だから、僕には理由がない! なんでわざわざ逃げ場のない村を選んで殺さなきゃならないんだ!!
[圧倒的に不利な状況に思わず声を荒げたとき、少女のすすり泣きとかすれた声を聞いた。]
え……?
[ペッカが取り出した古ぼけた望遠鏡を目で追う。]
……そういうのは、ドリーと同じになっちゃう。
[手を伸べて、望遠鏡に触れようとした。]
…
[ペッカは、アイノの告白を遮ったあと――
緩慢な仕草で、背を丸め。
彼女が触れようとした望遠鏡をすいと持ち上げる。]
同じになったら、お前ェが使いナ。
俺が生きてる間は、俺のもンさね。
そういうもンだ。
…ばーさんが言ってたのは。
コレのこと、――だろ。
[語尾を持ち上げずに、アイノの顔を覗き込んだ。]
よく、したろ。
海ン上で見た、不思議な生きもンの話。
みんな、コイツで見つけたンだ。
犯人がもし、人狼だってなら。
きっと、コイツで視える――
[狂気の沙汰に、乗り気になろう筈も無い幼馴染へ
ペッカは時代遅れの古めかしい望遠鏡を示して言う]
喰い殺されたドロテアの仇…
せめて、俺ラが討ってやってもいいんじゃねーか?
[やがて村衆のひとりがドロテアが握っていた毛が
そのベルンハードと同じ髪色をしていると声高に言い
始めたとき――ペッカも色を失うことになるの*だが*]
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