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[通りがかる人よりも、店を構えている店主に聞くべきかと。
良い匂いを漂わせている焼き鳥屋を見た。
焼き鳥屋の暖簾をくぐるときに、帽子とマフラーで顔を隠した人を見かけて一度視線を向けた。
芸人をいつか雑誌に載せたことがあったかもしれないが、顔を隠されていればそうたやすくは気づかない。
どこかのビルの一室に明かりがともったようで、路地裏にまた一つ光源が増えたのを背に、焼き鳥屋へと入った**]
[焼鳥屋の角を曲がるときに、
眼鏡と髭が印象的な男の顔が見えた]
前にインタビュー受けたときの
編集者さんに似てたけど……。
……まあ気のせいだよな。
仮にあの人でも、さすがに目的まで
同じってことはないだろ。
[自分に言い聞かせるように呟き、歩を進める]
[社に向かう途中にあったタバコ屋。
老婆が店番をし、年期を感じさせる
自動販売機が鎮座するその店先に視線が止まる]
大丈夫なのかよ。
[法律的な意味で。そんな言葉は飲み込む]
呑みたいときに呑めるって、幸せなことよね。
[焼き鳥屋のカウンター。
目の前には空になりかけの安酒が、
コップの中でおとなしくしている。
もう、何杯目だろう?
疑問に思わない問いを頭の中で思い浮かべた。
時間の経過を示すかのように、
剥かれた串が皿の中でばら撒かれている。
確か自分より先に居た黒い背広の男が出て行く時に、
(01)回目のおかわりを要求した。]
─ 探偵事務所 ─
[懐から、厚みのある茶色い封筒を取り出すと、腰かけている机の上の黒い電話のダイヤルを回す。]
あー、もしもし?来々亭さん?探偵っすけど。
青竜定食に、エビチリつけたの持ってきてくれるかい?
……あはは、大丈夫、がっぽり報酬もらってっからよ。
んじゃ頼むぜ。
[電話を切り、煤けた室内を見回す。
流行らぬ探偵事務所としてはこんなものかという風情の調度。]
……まあ、こんなもんなのかねぇ。
[呟いた口元には、薄く苦い笑みが浮かぶ**。]
[焼き鳥屋の中はそれほど広くはない。
客はまばらにいるだけにみえる。
店に入ったときに聞こえた威勢のいい声>>35に自然と目が向き]
……
[女性一人、というのも珍しい気がしてついそちらをみた。
生憎、翻訳関係の書籍は担当違いのため、翻訳家の素性には気づかない。
編集者に気づいた店主が声をかけてくれば、一つ頷きを返し]
あー……そうだな、ももとかわを塩で一つずつ。
それとウーロン茶をくれ。
[通りに居を構えているものにとってはどんな噂になっているのか。
尋ねる前にとりあえずの注文をしてカウンターの空いている席に腰を下ろした]
[横丁の端には、円筒形の厳めしいポスト。
少女に呼び止められた背広姿は立ち止まる。]
テンマ、と申します。
[捻りない返答は、相手のまなざしゆえに。
ひとつ、会釈より少しだけ深い辞儀をする。]
[――ふと、背広姿は懐に手をやる。
取り出した紙片は、一葉のハガキ。]
…
[すこし見詰めたのちに、傍らの古ポストへ。
手首を翻す折は、少女にも短い文面が見える。
『今日は、貴方のお誕生日ですね。』
真白いハガキにたったそれだけの、文面が。]
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