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[冬樹の後に続くように管理人室に入る。
半ば覚悟していたかのように、男は溜息を吐く。
ホズミの言葉もどこか遠く、眉根を寄せた。
そして思い出したように、ぽつり口を開く]
鈴木。それにヌイは?
[座り込んだホズミをそっと抱きしめる。言葉は出てこなかった。部屋の中を見回すが鈴木の姿は見当たらない。変わり果てたヨシアキの姿に動揺しているだろうナオとホズミに]
ナオさんとホズミさんは、ここで待っていてください
僕は鈴木さんを探しに外に行ってきます
薬屋さんはどうしますか?
[鈴木の姿を探しに管理棟の外へと足を向ける]
[……?と少しだけ不思議そうな顔をしたあと、口には出さず]
では、私はヌイを探す。そういう分担になるな。
お互い自分の命には気をつけるとしよう。
[冬樹のあとに続くように、*管理棟の外へ出た*]
え?あ、そうだね
お互い気をつけよう
[薬屋の言葉を聞くと、無意識にヌイの名前を出し損ねたことに気づくが、表情には出さないよう平静を装って管理棟の外へ出る]
す ず き さ あ ん
[名前を呼びながら、桜舞うシャワーの中、鈴木の姿を求め歩く]
[鈴木の姿を探しながら、昨日のことを考えている]
ヨシアキ君が殺されたとしたら、犯人はヌイさんじゃない
ヌイさんはずっと湖畔で絵を描いていた
そしてホズミさんを襲い、湖に落ちた
ヨシアキ君を殺した犯人は別にいる
ホズミさんは僕といたから違う。だとすると
鈴木さんか、ナオさん……それか、薬屋さんか
うそつき…。
[管理人室へ移動する最中、わたしは誰にも聞こえない声でぽつりと呟いた。
果してそれは、誰に向けた言葉なのだろう?]
[管理人室に入ると、ふわりと足許にさくらの花びらが舞い落ちた。
わたしはその花びらに誘われるように視線を上げ。ゆっくりと目の前の様子を伺う。
見知った景色に、ゆっくりと息を吐きながら。]
「ヨシアキ君?」
[ホズミさんの、何処か絶望したような声を聞き、わたしはどう思っただろうか。]
もう…嘘をつくのは飽きた。
[わたしは深く溜息を吐きながら呟いた。
それはフユキさんと薬屋さんが外に向かって席を立った後だった。]
[遺体の並ぶ部屋にはわたしとホズミさんだけが残っている。ホズミさんはわたしを案じて抱きしめてくれていた。]
『そんなこと 必要ないのに…』
[わたしは心でそっと呟く。]
[悲しみを分かち合おうとしてか、ぎゅっと抱きしめてくれるホズミさんから身を離し、わたしは彼女に向かい合う。]
ホズミさん、わたしの事、心配してくれてるの?ありがとう。でもね、案じてくれなくても大丈夫だよ?
だって…ヨシアキくんは…。
[わたしはにやりと口嗤う]
わたしの力で殺したんだもの…。
[くすくすと、小さな声を立てながら――]
[外で鈴木の姿を探している]
……果たしてナオさんや鈴木さんに、ヨシアキ君を殺せるだろうか
思えば管理人さんの姿を最初に見つけたのは、薬屋さんだったね。そして、いつも一人で桜を見上げている……
[かさりと何かを踏んだ感触に立ち止まり、地面を見る]
これは、利用者帳?
[ぱらぱらとめくると、利用者名に印や横線。鈴木の名前の上に引かれた横線に冷や汗が出る]
ナオちゃん.......?
[これまでに見せたことのない表情を見せるナオに驚きを隠しきることが出来ない]
どうして.....あんなに仲の良かったじゃない.......どうして......
[ホズミは泣きながらにナオのことを問いただした]
[後ずさりするホズミに、わたしはにっこりと微笑みかける]
やだ…逃げなくてもいいじゃなぁい?
それに、ヨシアキくんは…自分の力を驕りたかぶりすぎたのよ?
悪魔祓いの家系か何か知らないけど…。世の中には御札の力が及ばない物もあるって――
どうして気付けなかったのかな…。
[わたしは横たわるヨシアキくんに近づき、彼が手にしていた札を見遣る。札は見る影も無いものに変化していた。]
[足元を風が撫でる。桜の木の根元、舞い散る桜の花びらの中から、小さな人の姿が現れた]
鈴木……さん
[呆然と見つめた後、駆け寄る。所々に切り傷が見え、彼女はすでに冷たくなっていた。ぎゅっと唇を噛み、鈴木の身体をそっと抱きかかえようとして]
むかえるはとわのらくえん
[彼女の白い脚に書かれていた文字を口にした]
[泣きながら問い質すホズミさんに、わたしは困ったように視線を伏せて]
わたしだって…好きで殺したわけじゃないわ?
ヨシアキくんがわたしの事をそっとしておいてくれたなら。
[ヨシアキクンの許に跪き、彼の髪をやさしく梳いて]
わたしだって彼のたましいを貰おうとは思わなかった――
..........。
信じない.....そんな人じゃないもの....
私の知ってるナオちゃんはもっと優しくて
ヨシアキ君のことすごく心配してて
さっきだっていの一番にヨシアキ君のこと心配してたのはあなたじゃない......
どうして.....どうして............
[「信じない」
そう言ってふさぎ込むホズミさんに、わたしは何て言ったら良いか困り果てる。
本当ならこんな下らない情に流されて、自らの身を危険に晒すことなんて有り得ないのに…。
封じ込めたはずのナオという子の心が。"わたし"を突き動かしているのだろうか?
それともわたし自身も。あのヨシアキと言う少年に絆されてしまったのだろうか?]
残念ながら…。あなたが知っている"ナオ"はもう居ないわ。そう、この子がこの村に来てすぐに、わたしが奪い取っちゃったから。
でも――、ヨシアキくんを好きだった気持ちに偽りは無いの。これはホントよ?
[わたしは髪を梳く手を頬に滑らせて。自らの唇をそっと重ねた。初めて重ねた唇は冷たくて涙が出そうになった。
今更ながらに気付かされる。あぁ、わたしは本当に彼に心惹かれて居たんだと――]
[舞い散る桜が腕の中の鈴木の身体に降り積もっていく。桜の樹を見上げながら]
まだ、足りないのかい?
[つぶやくと、それに呼応するかのように強い風が髪を揺らす。桜の輝きが増したような気がした]
[さくら越しにフユキさんの声が聞こえた。]
「まだ、足りないのかい?」
うん、まだ…渇きは言えないの…。
さくらの渇きは癒えないの。
[わたしの声は彼に届くことはあるのだろうか?]
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