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[やがて木々らしきものがはっきり見えてくる。ビオトープと思しき場所。一度足を止めてから、ぐるりと回るように歩き]
……おや?
おや。君達も……此処の人かね?
ん、いや。此処の人、という言い方は少々妙だな。
ひとまず一人きりでなかったというのは僥倖だ。
[前方の二つの人影に、声をかけた。最後などは独り言のような調子だったが]
[差し出された手を見て、どうすればいいかわからないから。とりあえず、自分も手を伸ばしてみる。]
俺の名前か。そうだな。
獏って呼んでくれたらいい。
夢を食う生き物の名前なんだそうだ。
俺は夢を喰われた方だけれど。
獏、か。
夢を喰う方ではなく喰われた方である。
何だか詩的な言葉ではないかね。
[伸ばされた手を握り、軽く何度か上下に振る。それからふと、木の頂点よりも遥かに高い天井を仰ぎ]
本当に此処はドームのようだが、……
そういえば、君達の他にも人はいるのかね?
[思い立ったよう、二人に*聞いてみて*]
[大きすぎたブランケットを引きずる有様。
二歩三歩と、いくつ進んだろうか。ふいに響いたは――叩かれる音。
反応して回転しルリの視線が男を捉えた]
おはようです。
こんにちは。
こんばんは。
ごきげんよう。お元気ですか。
はい、おかしいですか、カナメ?
[最後のは声に。
向きを変える
小さな身体のバランスは危なっかしい。
[頭に浮かんできた挨拶を並べたのに、
「声」から注意をうけたか、それでも静かな笑みのまま、男に]
ルリは、ルリといいます。
あなたは、どなたですか?
[テンマと聞けば頷いて。その名を唱える。
問いには、ルリの部屋の方へ人差し指が向いた]
ルリのおへやは、あっちでした。
あっちだったかな。あっちでしょう。
あなたのおへやは、どっちですか。
音は、あなたでしたか?
たたいていたのですか?
ルリは、聞きました。
よい音でした。
ありがとうございました。
[男の手中の鍵には目は留まらず、
男の会釈の真似か、首を縦に振る]
かぜとは、なんだったかしら。
あー。
ぐずぐずで、ずびずびで、へっくしょい!かしら。
テンマもおかぜなどめさぬよう。
[音の響きが気に入ったのか、
「めさぬよう」を幾度も繰り返し。
笑顔で、掌を向けて。
またブランケットを引きずりだしたのだった]
[ルリと名乗る少女が、目の前で『カナメ』と話す。
憶える既視感は束の間遠くなる視線に表われるが、
並べられる挨拶に、ゆるり目許を和ませた。]
お蔭さまで… 元気にしています。
こんにちはとこんばんはは、適当な時間に。
[彼女の『カナメ』の補足でもするかの様に添える。
そして、自らの部屋を聞かれると困惑げに笑み]
私の部屋は… わからなくなってしまいまして。
…音は、私です。
お尋ねしようにも、皆さん長くお休みのご様子でしたが。
ああ。ご迷惑でなかったのなら、よかった…
[扉を叩く音を聞いたと口にするルリへと恐縮するも、
続く言葉へ安堵して…少しばかり背が丸くなる。]
そう、ぐずぐずでずびずびは、いけません。
へっくしょい、は愛らしいですから、機会があれば。
…。
有難うございます…私は大丈夫なので。
[幾分堅苦しくさえある丁寧な会釈でルリに感謝する。]
御機嫌よう、ルリさん…また。
[彼女の笑顔へ僅かに感慨を浮かべるも詮無く――
大きなブランケットを引き摺り歩む姿を*見送った*。]
――カナメさんに宜しく。
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