[ふと気がつけば、身は軽く。
足元では、熊を抱えた自分が、周囲をあかに染めていた]
……ああ。
あの時の、華と同じだな。
[零れたのは、苦い笑み。
いつか見た華、そのいろを掬って描いた相思華は、今は漆黒]
……さて。
果たして俺は、逝けるのか。
同じ、場所へ。
[問いに答える声はないが。
男は、薄く笑って、何処かへ向けて歩き出す。**]
[死を、手招く声。
見えた先にある人影は誰のものか――]
宇野…?
[霞む視界の向こうに見えたのは。
確かに女を南の島へと呼び寄せた者の姿。]
嗚呼、わたしも死する事で――…
今まで背負ってきた罪を、*贖えるのかしら?*
……頑固な人だ。
[楽しそうに、苦く、笑う]
[風も、波も、もう何も届かない海の底へ]
[どこまでも、その手は、*繋がれたまま*]
罪を贖う者だけが許されるのならば、
生きている者だけが救われる。
[生者に向かって呟いた言葉を、再度呟く。
大きな門の前。
数々の人が描かれた、地獄の門の前]
死んだ者が行くのはね――
[ぎい、と軋む音を響かせて。
背後の門が*開いた*]