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[扉を抜け、階段を降りた後の通路。アンの背中を追うフユキの背中を追う形で、ぺたぺたと歩いていく。涼しい地下で、飴を噛み砕く音がやけに大きく響いた]
……幽霊に。
幽霊といえば、こんな話を知っている?
[フユキの独り言が聞こえてか、ぽつりと。誰に向けてという風でもなく。皆に向けて、か]
ある男が墓場の前を通ってね……
本当なら通りたくなかったんだけど、時間がない時の近道で仕方なかったのさ。
ある墓の前を通った時に、声が聞こえたんだ。
「腹が減った……何かくれぇ……」って。
[いかにも怪奇話らしく語り]
幽霊に導かれてるとか、お兄さん。
[フユキの呟きに、ちょっと情けない声をあげる]
あの子、足、あったもんな。
[アンの姿を思い出しながら]
すごく恨めしげな声でね。
男はあっと驚いて、おにぎりやら漬物やらを投げ出したんだけど……
その声はまだ続くんだ。
「これじゃ駄目だ……わたしが欲しいのは……」
[と、言ったところで一旦立ち止まり、バクらの方を振り返って]
――甘い物だ!!
[両手をばあと振り上げて大声をあげる。驚かそうとしたらしい。ゼンジやバクの視線が此方に向いていれば、瞬いたが]
……。
[固まったバクを見ると、少し無言で。懐からフユキにあげたような大きいくるくるキャンディーを取り出すと、そっとバクに差し出し――多分半ば押し付けるようその手に握らせて]
はい、どーぞ。
ごめんね、驚かせちゃって。
[と普段の軽い口調で謝り、*眉を下げた*]
―村付近、森の中―
……こっちの方かな。
地図くらい持ってくればよかったね。
[荷物を片付け、また村に向かって歩いています。]
あーあ、昔住んでたんだし、道くらいすぐわかると思ったのに。
[昔、まだ村にいた頃の記憶を思い出しています。]
ああ、そっか。
村から外に出たこと、ほとんどなかったから。
大きな煉瓦のお家が目印……って。
どこまで行っても同じ景色に見える。
本格的に迷ったかも。
窯神様が導いてくれないかな。
[ちょっと疲れが出てきたようです。
元気に歌を口ずさみながら、歩いて行きます。]
[懐から携帯を取り出して操作しています。]
だめ。電波届かないや。
考え甘かったなあ。
[懐から手紙を取り出して、じっと見つめます。]
同窓会のお知らせ……じゃないよね。
学校、お友達いなかったし。先生、元気かな。
[しばらく歩き通しです。だんだん涙目になってきました。]
もう道、全然わかんないし。
このまま村に辿りつけずに野垂れ死ぬ、とか嫌だよ。
この森、熊とか虎とか出てこないよね?
[嫌な予感と同時に、草むらからがさりと音がしました。]
……ぴっ?
[足を止めて、怯えた目で草むらの音のした方を*見つめています*]
―薄暗い廊下―
何やってんですか。
[ゼンジとバクのやりとりを冷ややかな目で見ていたが、前方を見つめて急に足を止めた]
あの子、明かり持って無くない?
暗くても歩き回れる位、此処に来ているか…或いは彼女に神託でも下っているのでしょうかね。
[適当な推論を掲げたあと、視線をゼンジに向け]
…ぜん兄。あまり怖がらせ過ぎるのは、駄目ですよ。
確かに、最初にここに来ていたのはあの子だけど……。
[復興という言葉の響きと、ヂグの動作に笑みが零れる]
村をもう一度?
[犬の影に手を伸ばす。
それが揺れて伸びたのは、光源がずれたから]
此処の建物以外はあんなに朽ちて、廃墟になっていましたが…復興なんてできるんですかね?
親睦会なら、これは確かに素敵な余興ですけど。
[再びランプを掲げ、足を進める。
唐突に視界に入ったのは、アンの背中と]
―――……窯神、様…?
[草むらの中から出てきた獣に襲われて、一日動けなくなっていました。
やっとのことで仕留めた獣を、鍋でコトコトと煮込んでいます。]
……こんなに危険な場所だったかな。
どこか間違えてる気がしてきた。
あら、美味しい。
[獣の肉を食すと、また村に向かって歩きはじめます。]
[歩いていくと、やがて村らしき建物の影が見えます。]
……あそこかな?
やっとついたみたい……懐かしい、臭い。
と言っても、誰もいないみたい。
[村の中を散策しています。人の気配は見当たりません。]
誰かー、いませんかー
[呼びかけるように声を出しながら、村の中を彷徨っていました。
どうやら誰の姿も見つからないようです。
やがて諦めたように、昔住んでいた家へと向かいます。]
……すっかり風化してる。
13年だもの。無理ないね。
[家の中へ入っていくと、中を見回します。
寂れた家を感慨深げに眺めまわしています。]
[家に荷物を置くと、居間に横になります。]
……廃村の中に独りぼっち。
なかなかできる体験じゃないね。
せっかくだから満喫しよう。
[荷物の中から日記帳を取り出して、開きます。
しばらく白紙のページを前に、考えています。]
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