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え……?
[タカハルの小さな呟きには、其方を見たが。特に何も言われなければ、言及はせず。些かおぼつかない足取りで、*歩いていった*]
―― 回想 廃屋にて ――
[エンジンをかけた軽トラにキクコを乗せてから、
――移民の男は一度廃屋の中へと戻ってきた。
カウンターのそばへ落ちている重そうな袋を拾い上げ、
簡易レーダーが置き去りになっている傍へと置いた。]
ンガムラさん。
――これ、りんご。
ギンスイが 『喰ってくれや。』 と。
[ギンスイが持ってきていた袋。
中には重いほどに、林檎が詰まっている。]
姉ちゃ 見つけてくれた、礼じゃ ち。
[移民の男は、袋を開ける素振りも見せずそう言い添える。]
適当に分けて、言うこつじゃったで。
ちっと 残しといてくれりゃええがよ。
[キクコを送った軽トラが彼を迎えに来るまで、
果たして林檎はいくつその数を減らすか――*さて*]
―― 回想 終了 ――
[その頃ンガムラは、ほんの少し前に『んな得体のしれないもんいらねぇよ』と言っていたはずの、林檎を食べていた]
俺、ホズミさん見つけてねーんだけど。
[ネギヤを探していたと聞けば]
はぁ、ネギヤを探しかいな。
おまえさんたち、こんな時間まで動いとったなら、腹も空いて疲れたじゃろう。待ってんさい。
[そう言って店へとって返し、おにぎりを詰めたパック二つ分を、手に戻ってきた。捜索の人々のために用意したおにぎりだ。
そのパックを、ヌイとキクコへ一つずつ手渡す。
そして、キクコの身に付けたサマーセーターを、まじまじ見つめてから。]
おキク、ちゃあんと身体を暖かくして、寝るんじゃぞ?
[ネギヤのこと、ギンスイの話は聞いたかどうか。
言葉を交わした後、手も振らずに軽トラックのテールランプを見送った。]
―翌朝・自宅―
ああ、しんど。やっとこさ起きれたわ。
昨日、遅くまで起きておったせいで、疲れたわいなぁ。
ああ、
飯の用意はいらん、嫁ごのこさえる飯も不味いしなぁ、
わしゃ、月下で食ってくるわ。
[まだ人形店は開いていない。
身支度を終え、家族へことわりを入れてから、自宅を後にした。]
[手にしたのは海老茶色の傘、
提げた巾着には、小さなてるてる坊主が揺れている。]
―月下―
[すれ違う村人へは無愛想な挨拶を投げつつ、月下へ。]
[やがて食堂の席へ落ち着き、たけのこ定食を注文すれば、やがてそれが運ばれてくる。
ネギヤに加え、彼の妹のアンまで行方が知れない、
村人たちからそう聞き及んだと、月下の女将は語った。]
[たけのこを ぱくつく。
時折、女将の話へ相づちをうち、窓の外を眺めたりする
ボタンの様子はいつもより少し、機嫌がよさそうだ。*]
……アンちゃんも、ネギヤさんも……
きっと、戻ってくるよ。
本当に消えちゃうわけ、ないよ。
[タカハルに返す言葉は、自分に言い聞かせるようでもあった。ンガムラのそれらしい軽トラが見えてくれば]
……ンガムラさん……
[その名前を呟く。信じろ。声がそう告げた人物。
ンガムラが此方に気付いたなら]
……ンガムラさん。
少し、話したい事が……あるんですけど、……
[思い立ったよう、その近くに駆け寄り、切り出した*だろう*]
タカハル、セイジ。こんな夜更けに、裏山ンほうから…
[呼び止めた人影ふたつを、ヘッドライトの灯りで見分けると
運転していた移民の男は咎めるというよりは驚いた声を出した。
彼らが、移転したお社のある裏山のほうから歩いてきた様子で、
夜中に其処へ近づくのを村人が好まぬことを知っていたから。
キクコも彼らを――特にセイジの顔色を案じる様子だったかで]
… セイジ …
ほ ンガムラさんに用なら―― 荷台 乗ってけば 良かが。
[ンガムラの名を呼びながら此方へ駆けて来たセイジの瞳に、
男は何か――先のギンスイ>>+7の言葉と通じるものを感じて
問わず荷台を示した。タカハルへは、送るから乗れと声をかけ]
婆っばん。
俺ァ ここン人等が すき じゃっで――怖か。
[低くちいさな声で、年長のボタンへ弱音を吐く。
静かな憤りの裡の不安は、すぐに唇と共に噛むが]
こんなが 続くよう じゃったら。ギンスイみたく
神さまはまた 『間引く』か 知れん なあ…
[呟きは去り際。もう一度夜食の礼を言い軽トラは走り出す。
荷台に乗せていたセイジとタカハルは小言を免れたろうか…]
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