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はぁ? 神隠し? 何を言ってんだ?
この平成の世のデジタル世界に神隠しだなんて。
テレビももうすぐ地デジ化するってのにあほらしい。
[夏祭り会場。
打ち上げられる花火の音に、
ひとの歓声は一際大きくなった。]
幾らうちが田舎だからってなぁ。
今時流行らないだろう、怪談だなんて。
[カラコロと、下駄の音。
すぐ隣を歩いている筈の人の足音は、近く、遠く]
…神隠しと、座敷童のお話。
何だかとても、可愛らしくて…せつなくて。
ああ、先生、ご存じですか?
今年、古い盆踊りが復活するんですって。
かくれんぼ踊り…皆でお面をかぶって、この世の人も、あの世の人も…人ではない子たちも。みんな一緒に、楽しく遊ぶための踊りなんですって。
[手には、いつの間にか狼の面**]
――そう、流行らないですよ。
神さまの神隠しだなんて…
[そっと懐から取り出した、
白粉の匂いが漂う古ぼけた手紙を開いて]
いまのご時世には似合いませんよ、
そんな…五十年前の昔話なんて――
[男は、懐かしそうに目を細めて*微笑んだ*]
…うん、あたし、かみさまが居るのがわかってたから。
かみさまに呼ばれたと、そう思ってたの。
[拗ねた表情には、軽く小首をかしげつつ。
さらに促す声に、軽く目を瞑って、ゆっくり開く]
…ごめんね、ありがとう、ムカイ君。
うん。帰ろう。帰らないとね。
…って、手怪我してる!大丈夫?
帰ってその手、治療しないとね。あたしも、あまり上手じゃないけれど、包帯くらいは巻けるもん。
[そう言って、ゆっくりと歩き出した**]
― 現代 ―
[どこからともなく、下駄の音がする]
下駄の音かー。なんかお祭りっぽくていいね。
そういえばうちのばーちゃん、ずっと下駄を大事にしてたなあ。かみさまからのプレゼントだって。
どうやってかみさまから貰ったんだろ?
[ふと浮かんだ疑問を口にだして、祭りの中を歩いていく]
― いつかどこかで ―
[カラコロ
下駄の音が鳴る]
[それは50年よりちょっと前の話
一緒に遊んだ女の子
下ろしたてみたいな、
赤い鼻緒の下駄ひとつ]
『ミーナツちゃん
あそびましょ』
[其の声がいつのものなのか。
覚えているのはその人だけ。
誰かとその時聞かれたら、
人差し指を口元に当て、]
― 夏祭り会場 ―
相変わらずソラさんはゴージャスかき氷派なんだな。
おじさんにサービスしてもらえばよかったのに。そしたら3点コンボどころか5点にも10点にも……う、食べる前に溶けそうだ。
[笑い袋を抱えて屋台の間をそぞろ歩く]
お祭りが終わったら宿題やる準備しないと。どうせみんなくるんだし、座敷片づけて。
感想文はやっとかないとだめか。フユキ先生の新作でいいかな。なんだかどこかで読んだことがある気がするし。
[ぶつぶつぶつ。独り言]
― 40余年前・フユキ宅 ―
肩書きって便利だね。
[『若先生』が適当言うと、大家は簡単に鍵を開けてくれたのだった。
開いた扉から冷気が出てきた気がしたが、すぐに暑い、うるさい、夏に覆われる]
どこに消えたんだろうね。
[一人ごちる。
おばけも、チラつく景色も、もう見えなくなっていた。
フユキの机上に残っている、鬼気迫る文字は判読が難しい]
『ん〜……? ここどこぉ?』
[と、少女の声がした。
背後の布団がもぞもぞと動いて、その中から顔を出したのは]
アン、ちゃん……!?
[失踪時と変わらぬ見た目の女学生を見て、腰を抜かしかけた。*あばばばば*]
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