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[ゴシゴシと服の袖で目の辺りを拭ってから、居間へと降りていった。戸を開けると、いきなり飛び込んできたのは大きな木]
お部屋の中に、木が生えてる・・・。
どうして?
・・・あ・・・。
[しばし呆然と見ていたが、居間に誰もいないことに気づいて途端に不安になった。
恐る恐る名前を順に呼んでいって、人の姿を探す]
ギンちゃん・・・。
[やっとギンの姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄り、そっと抱き上げてその温もりを*受け取っている*]
こんなに小さかったのにねぇ。
[押し入れから取り出したアルバムをめくり、目を細めている]
あなた?
[ふと、『人の顔はそんなにじろじろ見るものじゃない』と言う声が聞こえた気がして振り返った。
誰もいない室内を不思議に思い、居間へと向かう]
あら、もうそんな季節だったのねぇ。
ちかちゃんはクリスマスは何が欲しい?
ごちそうも作らなきゃいけないわよねぇ。
[居間に現れたツリーににこにこしながら、本棚から料理の本を*取り出した*]
-自室・スイ-
あれ──……?
[天井を見上げて何度か瞬きをした。昨夜の記憶はツキハナの腕の中で途切れている]
寝ちゃったのかな。
[やわらかくていい匂いのするツキハナを思い出し、うーと呻きながら、両手で顔を押さえた。耳まで赤い。
ひとしきり照れて起き上がり、覚えのある煙草の残り香に気が付いた]
運んでくれたの……とーさん……かな。
[口の中でありがとうと呟いた後に、首を横に振った]
あとで、ちゃんと言おう。みんなに。
[瞳に今までの迷いは無く、すっきりとした笑みを浮かべ、皺だらけになったシャツに気付いて身支度を始めた]
-居間・スイ-
おはよー。
なんでクリスマスツリー? ……ギン?
[不思議そうな顔をした後に何か思い至ったのか、ギンを見て笑う。
ツキハナに気づけば、顔を赤くしながら”昨日はありがとう”とぶっきらぼうに告げて、クリスマス料理の本に気付く]
クリスマスのご馳走いいね。おいらも手伝うよ。
ちかもいっしょに作ろうか?
おいらも作ったこと無いけど、きっと楽しいよ。
[作る方々と一緒に*台所に向かった*]
[真っ暗の世界で
ただただ丸まっている夢をみていた。
誰かにほっぺを掴まれた気がして、
眠りが浅くなる。]
(爺ちゃん…?)
[大好きなひなたの匂い。]
「弱音吐かない子が一番心配ですよ」
[心配?私の心配をしてくれるの?嬉しい…
…でも、アンは…アンは弱音ばかり吐いてる子だったよ。
自分の病気を盾にして、いっぱい我が儘言ってた。
どうせすぐ死ぬんだから、私のお願いを優先してって、
無理難題を押しつけてた。
…でも、先に逝ったのは彼女だったの…。]
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…。
[自室で横になったまま、両手で顔を覆ったまま
ただただ謝り続ける。手の隙間から涙がこぼれる。]
(幸せになってほしい。
どうしたらこの祈りが届くだろう?
破り捨てた手紙は、もう渡すことはかなわない…。
だから、せめて今大好きな人たちには…。)
[ゆらりと立ち上がり、洗面所で顔を洗った。
お茶の間を覗くと、立派なもみの木が鎮座していて
思わず目を見張った。]
[ギンを抱いて陽だまりの中で目を瞑っていたら、ツキハナに声を掛けられびくりとした。
その拍子にギンは腕の中からするりと抜け出ていってしまった]
えっと、くりす・・・?
[意味が分からなかった。
しかしご馳走と聞くと、お祭りか何かだと理解]
ほしいもの・・・ごちそう・・・。
えっと、くさだんご!
[ちかは、思いつく限りのご馳走の名前を口にした]
うん。
ちいあにさま、わたしも作る!
[スイの後ろを付いていって、台所で手伝いを始める。
しかしこの家の中には、ちかの知らないものや分からないものがいっぱいある。ありすぎる。
ちかは結局オーブンの前に陣取り、丸鶏の焼き上がりを知らせる*係りをしている*。(見てるだけー)]
-台所・スイ-
ちかは──そこの窓の中の鶏が茶色になったら教えてね。
[真剣な顔でオーブンを見つめるちかに微笑んで、ガラス障子越しに居間を見る]
ねーちゃん飾り付けありがとー。ケーキ買いに行くの?
外暗いし、じーちゃんかとーさんと一緒に行った方がよくない?
[心配そうに声を掛けるが、台所は手が放せない状況で、ユウキに付き添いをお願いしようとしたけれど、呟きを聞いて、声を掛けそびれてしまった]
おいら知ってるんだ。クリスマスプレゼントを贈るのは、サンタクロースでも神様でもない。人が自分の大好きな人に贈るんだって。
だから、おいらご馳走作るんだよ。
大丈夫よー!子供じゃないんだから。
あんたって本当に小姑みたい(クスクス)
[台所から心配そうな声を投げるスイに
ひらひらと手を振って、出ていく。
ユウキの呟きは聞こえなかったようだ。]
あわてんぼうのーサンタクロースー
[耳たぶの柔らかさの白玉をぷにぷにつまんで幸せ気分]
草団子が緑で、いちご大福が桃色。
クリスマスねぇ。
あ、アンちゃんリボン買って来てちょうだい。
チキンに結ぶの。
はい、ちいあにさま。
[元気よく返事をして、オーブンの中を凝視する。時間経過に比べ見た目の変化に乏しい肉の塊を、頬杖を付いて楽しそうに]
・・・ととさま・・・・。
[しかしユウキの呟きを微かに耳にして、瞬間表情が曇る。
頬を覆うようにして両こめかみに指先を当て、何かに耐えるように小さく唇を噛んだ]
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