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[何度も繰り返した、穏やかな声の出し方で。
今は彼女の名前を呼ぶ]
ねえ。モミジ。
君は、未来のイブのあらすじを知っている?
どうして、主人公は、
アンドロイドを欲しがったのか。
あら、それじゃ今からレシピ書いてあげるわ。
今日は人も少ないみたいだし、いいわよ。
[そう言って、手元のメモに作り方を書き始め、ナオに渡す]
きっと貴方らしい味になるわ。
上手く出来たら、私にも食べさせてね。
何故?
ふざけんな。今回の作戦で<42>箇所はグレーゾーン潰すチャンスだったんだ。それがお前のせいで・・・
[声を荒げそうになるが、周りの視線を感じて言葉を飲み込む]
挙句の果てに、問題の店に行くだと。
嫌に決まってるだろ。
あんな店・・・!
[そう言って早足で歩き出す。イブレンドとホットサンドの味を思い出しつつ]
[原稿を一通り読み終えると
さっそく今回の話を受けてくれた
編集者に見せる。
そこでOKが出ると返事のメールを出す]
「ありがとうございます。
これで問題ないです。
誤字など細かい部分はこちらで手直しさせて
いただきますが、大幅な内容変更は
ございませんのでご安心ください」
[ポルテと「書き手」に同じ内容のメールを
送信して、今回の仕事を終えた]
それが、“アンドロイド”のはじまり。
[口元を寂そうに緩めて]
変だと、思わない?
彼が欲しかったのは、本当は何だったのか。
僕も、男だから、わかる。
グレーゾーンを潰して。
それで君は、果たして満足感を得られたのかな?
得られたのなら、いったいどんな…満足感だろうね?
[ぼんやりと宙を眺める。
ギンスイの心の思いを、少しでも解ろうとするように。
足早に立ち去る後ろ姿を見つめて。]
[そして程なくて、あの喫茶店と同じ名を持つ本は
書店に並ぶこととなる。
ポルテと「書き手」の想いを
どれだけの人が受け取るのだろうか
そして――]
あ、ここのコーヒーも結構いけるかも。
(でもEVLENDにはかなわないかな)
[あの店と出会う前と変わらない生活。
『イヴの時間』にいた頃が幻のようにも思える]
あぁ、ハツネ?
うん、これから「イヴの時間」に行こうと思うんだけど。大丈夫だよね?
[手のひらの携帯端末に話しかける。
声は、辺りに響き。少しだけ賑やかに跳ね返る。どこか春のような暖かさと優しさを含んで。]
うん、ギンスイくん…も誘ったよ。きっとナオさんも居るだろうし、翻訳家のお姉さんや、髭のおじさん、それにバクくんやオトハさん、面白いお姉さんやサングラスのひとや、マスターも。
きっと集まると思うよ。だってそこは特別な場所。
*「イヴの時間」だから*
……ナオさん。
いえ、ナオさんだけじゃなくて、ここで会えた皆さんのことも、そうなんですけど。
相手が人でも、機械でも、自分の気持ちに変わりはない……ってことと、だから知らなくてもいい、ってことは、別……ですよね。
もし、互いにもっと親しくなりたいのなら、互いのことを、もっと知りたいと思うでしょう。知った上で尚、変わらずにありたいと願うでしょう。
いつか……こんな風に誰もが共に安らげる場所がもっと増えて……ありのままの姿で、触れ合えるようになればいいと、思います。
[嫌に決まってる―と言いながら「イヴの時間」の前で足が止まる]
―あのアンドロイド・・・
ナオは今日も来ているんだろうか?
もう1度会ったら聞きたい事があったのだ
[いつもの看板を見つめた]
私の祈りは、そのために。
幸せな時間が、長く、確かに続きますように。
ごめんなさい、変なお話をしてしまいましたね。
また……前みたいに、皆さんのお話も聞きたいものです。
あら、誰か……いらしたのでしょうか?
[カウンターの空席へちらりと視線を向け、
それから入り口を見遣った**]
(しかし俺はどのツラ下げて店に入ればいいのだろう。どうせ客にもマスターにも倫理委員会の人間だという事は、解っているだろうし)
[1度通りすぎて、止まり、戻ってくる]
(だけど、ナオとは店内で話さなければ意味がない、というのも事実)
・・・これで最後だ。
[小さく呟くと、思い切ってドアを開けた。見慣れた顔がこちらを見ている。]
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