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おれも、ちょっと、
… 人間くさくなった、って、ことなんでしょうかね。
[あまり歓迎していないように、
ぼやくように、男は、そう言って]
そいつが、
しあわせって呼べるのかは、
わかりませんが。
もやもやしてるもんは、
… すっとするかもしれませんよ。
心残りの…残り半分は、たぶん。
そいつで、片付くんじゃないですかね。
[おれのは。と、そう言って]
ああ。あと。
もしね。
陽さんが──おれを、止めたいなら、
早いとこ、言うといいですよ。
[陽の希望を振り払ってまで──貫く心算は、最初に言ったとおり男にはなさそうで]
餌を殺すのを、ためらうほど、
… おれは、やさしくないですから。
もし…、機会がきたら。
おれは、きっと、躊躇をしませんよ。**
[と、忠告めいたことを男は言い置いた**]
(──…かみさま)
[音なき音。
小さな囁きに押されるようにして、躊躇いがちな手を伸ばす。
そっと触れたのは、乱れた長い髪。
それを整えるように、指で撫で梳く。
怯えたように、悼むように、
──いつか、遠い日に微笑んでそうしたように。]
なんか…、”変”なやつがいる。って、思ったんだ。
[おんなじ、と。
言う男に、笑って告げる。]
僕はまだ…よく、分かってなかったから。
けど、何かが違うと思った。ずっと。
[だから、「兄」に会いに。
良く遊びに通った牧師の館で、隠のあとも随分ついて回ったのだ。
泥の匂い、土の匂い、──死の匂い。
微かな恐れと、幼い興味。
隠と交わす言葉が、常ならぬ音と気付いたのは、
いつの頃のことだったか。]
…、そう?
[おちび、と当時の自分を呼ぶ男に少し首を傾ける。
さしてありがたくもなさそうな礼の言葉には、肯定も否定も送らぬまま。]
それでも、僕は──…
[そこで言葉を切る。
自らの手を見た。血に赤く汚れた手を。]
(ぼうっと、何かが視界の中迫ってくる。)
>>27 ――っちゃん。
(氷より冷えた声が耳に這いこみ、それではっと、こちらの瞳を覗き込んでいる顔に焦点が合う。
その言葉にぞくり、と目を見開くが、先ほどの眩暈よりは衝撃が軽い。
―それに、)
普通そんな事言われればどきっとする所ですが…。
本職の方に言われるのじゃ、かえって愛情さえ感じる台詞ですよねぇ。
(くつくつと、笑いさえこみ上げる。
私は狂ってしまったのだろうか?)
ねえ…―、できれば私もあなたに埋葬されたかった。
何だって彼は―、最後まで私を「喰い残した」んでしょうねぇ?
(きしきしと、石も重圧には軋み始める。
「終わらせてくれ―…、早く、終わらせてくれ…!」
石像に秘めた、内なる叫びは敢えて押し殺した。)
いつだって、そうしたければ、できたはずなのに?
[ねえ?と墓守の顔を逆に覗き込む。]
ここへ来て、また何か思い出しそうなんですよ。
ああ、やっぱりここだ。
[返事も待たずに立ち上がり、仕立て屋と流れ者が使っていたマグカップから、それぞれ書き付けを摘み上げる。
棚の奧から見つけ出したココアを人数分仕立てると、広間へと戻って行った。]**
[ことんと首をかしげ幼女のように澄んだ瞳で尋ねた]
しすたー!しらない人がきたよ。しすたーのお友だち?
(それは求めても目の前になかなか現れなかった恋人の事も、やっと和解したその眼の前で消えてしまった父親の事も、自分が誰かも死んでしまった事すら全て“記憶から消去してしまった姿”だった)
キャロルってだあれ?あなたのお友だち?
[そう言うとまた布にギュッとくるまりハミングしながらスノードロップをちぎり続けた]
―自分の記憶を
思い出をちぎり捨てているかのように―
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