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こんにちはー。
[四角いふろしき包みを抱えた女がひとり、集会所の入り口で声をあげる。]
辻村のエビコです。
差し入れ持ってきましたけど……。
皆さん生きてますかー?
[どことなく間延びした口調で言うと、辺りをきょろきょろ。]
あら、ちーちゃん行ってらっしゃい。
残しておくから、早く帰ってくるのよ。
[言い終わる前に見えなくなったプレーチェの背を見送ってから、グンジに向き直る。]
ああ、先生もこんにちは。
おばあちゃんがおはぎを持って行けって。
[抱えた包みを軽く持ち上げて笑った。]
準備の方はもうすっかり?
あらあ。
先生は監督役なんですか?
じゃあ、学生さんが頑張っているのかしら?
[集会所の座敷に上がり込み、勝手にお茶を入れ始める。
子供の頃からもう何度も足を運んでいる場所だ。]
ずんだがお好きなんですか?
おはぎ、小豆だけなんですよぉ。
[困った顔で、お茶を差し出す。]
あらあ、知らないんですか?
先生は初めてのお祭りでしたっけ……?
なんだかもうずっと前からこの村にいる人のような気がしていました。
[自分もおはぎを一つ取ると、プレーチェの分として脇に避けておく。]
でも、そういえばそうですよねぇ。
ずっとここにいたら奥様も心配しますもんね。
[にこにことわらい、お茶を一口。]
あらあ、変態でした……?
違うふうに聞こえました。
私ったら、おばあちゃんみたい。
[笑って立ち上がり、窓の向こうに目を凝らす。]
蝶の羽化ってこんな時期にもあるんですねぇ。
小さい頃、空き瓶で育てたりしたなぁ。
……やっぱり気になりますよね?
[グンジの言葉にぱちぱちと手を叩いて喜んだ。]
どんなチョウチョなんでしょうねぇ。
あんなに叫ぶくらいですから、きっと奇麗なんでしょうね。
ツチノコって孵化するんでしょうか……?
[グンジの言葉に首を傾げつつも、のんびりと後をついて行く。]
あらあ。みんなこんなに集まって……。
そんなにすごいチョウチョなんですか?
確かに……猫は服を着ないものねぇ。
[うんうんと頷きにゃんこに手を振った。]
でも、そんな格好じゃ駄目ですよ。
水着を忘れちゃったのかしら?
[元全裸の少年の姿に首を傾げた。]
遭難者ねぇ。
先生の知ってる人みたいだし、とりあえず怪しい人じゃあなさそうかしら……。
[少年のお腹が鳴る音を聞くと、くすりとわらって皆の言葉に頷く。
宿舎を指した。]
向こうにご飯やお菓子があるけど来る?
お祭りを見に来たんでしょう?
あら、先生、仲良しなんじゃないんですか?
[後ずさるグンジに首を傾げた。]
寝ている時は全裸で良いとしても、起きたら服を来ていないとちょっと寒いですよねぇ。
服、寝ている間に盗まれちゃったのかしら……?
あ、さっきマシロちゃんが洗い物してたから……もしかしたら一緒に洗われちゃったのかも。
[祭りの太鼓の音が聞こえ始めた。
潮に混じる煙の匂い。]
あらあ、大変。
お祭りはじまっちゃうわね。
ご飯を食べるべきか、お祭りを見るべきか……。
[ご飯かお祭りか。イマリの言葉にうんと頷いた。]
そうね。
まずはご飯にしましょうか。
佐々木君も、その格好じゃお祭りにいくにはちょっと寒いしね。
宿舎で着替えると良いわ。
[決断すると、砂を踏んで歩き出す。]
あら……でも、佐々木君は先生のこと慕ってるみたいですよ?
[所在なく視線を泳がせる少年を目で指してにこりとした。]
他に知り合いもいないみたいですし、仲良くすれば良いじゃないですか。
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