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あー……それもそうか。
[一発解決とはいかないか、と。
指摘されて、そう気がついた]
俺は別に、落ち込んでるわけじゃねーよ。
お前が沈むから、巻き込まれたんだろーが。
[苦笑の滲む気配に、わざと素っ気なく返した。
ここでしんみりするのは、色んな意味でガラじゃない]
違う。私自身の、ワスレモノ。
これは、「今」このとき忘れて来ていたもので、みーちゃんと彼は、関係ない・・・
[だとしたら、全く関係のないことか。
つぶやき、もう一度メモを見る。]
ワスレモノ………か。
[自分は何かを忘れていて、そのために10年前に飛ばされて。そうして目にした光景は、何か意味を持つはずなのに、それが分からない]
10年前、何があったっけな。
[縁側から外へと出ながら思い出そうとしてみる。大きな出来事だったかもしれないし、日常的なことだったかもしれない。どれがワスレモノに関わっているのだろうか]
あん時俺は16だから、高校入った辺りなわけで…。
[そんな風にぶつくさ言いながら、進路は駅前の方へと向かって行った]
―海―
……え?
[振り返る]
誰か、喋った?
[男か女かもよく分からない幼い声。寂しそうに言うのが確かに聴こえた。
けれど子供の姿なんて、どこにもない]
・・・あれ・・・?
これ、は・・・
[時系列に目を留める。
「15年前、夫死去」
「その後、この町に引っ越し」
「1ヶ月後、幼馴染が追いかけてくる」
「4年後、家に招き入れる」
つまり、]
彼を家にあげたの、ちょうど、このころじゃない・・・
[今の状況から考えて、これは偶然ではなさそうだ。]
[今の仕事は決して楽ではないけれど、自分の手からなにかを生み出すことは楽しくて。。
けれど、もともと裁縫が得意だったのは友人のほうで、彼女は不器用なアスカを笑いながらも根気強く付き合ってくれたものだった。
最初は半分意地になっていたようなもので、昔の自分がみたら目をまあるくするのかもしれない]
そうなのよ。
菊子ちゃんもうさぎさん、あった?
困ったことよね。
いつのまにか戻ってる、なんてのは期待できないみたいだし。
[先程の消えた女の子の話をしながら、ひらいた扉の先はガラン、としていた。]
……んでも。
[不機嫌に呟いてから、ふと、感じたのは疑問]
俺、なんであんなにムキになって描いてたんだっけ?
[10年前は、何枚も描いていた、絵。
それから2年後には、ほとんど描かなくなっていた。
その間にあったこと──あったこと?]
……そういや、10年前、って、ちょうど……。
行って来るトイイヨ。
想い出ガ、呼んでイルのカモしれないからネ。
[アスカと、ズイハラに、そう告げる。けれど職人は、公園から動こうとはしなかった]
・・・みーちゃんだ・・・
[毎日のように家のチャイムを鳴らし続ける彼に、自分と同じように冷たい視線を投げていた娘。
彼女がいつからか彼に好意的になって、]
「私、おじちゃんだいすき!おかあさん、私、おじちゃんにお父さんになってほしい。」
[毎日のように言われたのだった。]
へーへーそーですかー。
俺が悪ぅござんした。
[素っ気無い返答にこちらもふざけるような態で返す。そんな風に軽く返してくれるのは、気持ちの切り替えの部分を考えればありがたいことだった]
…まぁなんだ。
とりあえずビミョーな気分にはならずに済むぞ。
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