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……全部、夢だったら、よかったのにな。
[イルマは元気で、自分はいつもどおり。
最近は鮭を川に捕まえにいくのがなかなか楽しい。
星読みなんてなく。
今頃収穫祭の準備をするのだ。
祭は皆で喜びを分かち合う日。最初は、村にはなかなかなじめなかったクレストの手を引いて祭にいった日を思い出す。
スローテンポの自分と、しゃべれないクレスト。
お互いが無理せず、のんびりと、過ぎていく時間が、本当に貴重なものだったなんて、思うのは]
だいたい、失ってからなんだ…。
[遅いのだ]
兄ぃ…。
いいんだ、おれ、兄ぃが、人間だ、っていってくれなかったら。
ウルスラ、みたいに、みんなに、疑われたかも、しれないから
だから……
[はじめてみた、ユノラフの涙に、喉がつまった]
[ずっと、泣いている友のそばにいた。
泣かないでくれという言葉も、手も、届かない。
無力感をかみ締めていた]
お前は、お前だけでも、生きていてくれ。
クレスト…。
[虚ろな表情で部屋を出ていく彼の姿を見送り――
そして、人気がなくなった自分の部屋から、居間へと移った]
[今もこうして、心が存在しているのはきっと。
罰なのだろう、と受け止めはじめていた]
― 居間 ―
[幽霊なので壁抜けをしてきた]
[鎮痛な面持ちの面々、そして――]
……アイノ?
[声だけ覚えた。姿は多分あの子――といううろ覚えだったが。
同じように、存在感が希薄な姿を見つけて、声をかけた。
ただ、こちらは――包帯も、傷もない顔だったので印象は随分かわったかもしれない]
[ヴァルテリの話から、投票の顛末を聞いた。
クレストとアイノが同票で、そしてアイノを殺めたと]
――クレスト、が、どうして…?
[不理解が疑いを生んだのだと、理性は知っている]
クレストは、みんなのために、つらい話を、きかせてくれた、じゃん
ヴァルじいだって、人狼に直接あったことないのに、クレストは、騒動のこともしってるって……
[苦悩するクレストを励ます言葉も、庇う言葉も、届かない]
れい、よ。
お前、何をいって、るんだ……?
[――アイノを殺したのは、この場にいる大人たちの投票だ。
それは――投じた自らも知っている。
手を下したのはヴァルテリだが、自分も殺したも同じなのだ]
[――でも、だから。
死した人を前に笑う、彼が、わからない。]
海、から川に帰ってくるんだ。
それを捕まえて、箱(グラタン)にして食う。
うまい。
[軽い自画自賛が入った]
……わか、らない。
せんせ、なら…くわしそうだけれど。
あんまり、長くならないほうがいい、な。
みんな、祭にいけなくなっちまう。
[アイノの言葉に、ぽつり]
夢、じゃなかった、ら?
[考えるだけ無駄だという言葉が帰ってくることをある程度予想して、そう呟く]
[ニルスの言葉には――、頭を掻いた]
うん、お祭りのご馳走
たんと用意してるんだ。
お菓子も、取れた果物も。
収穫をお祝いする祭り、だから、
おれたちも、日頃お世話になってる、みんなのために、はりきって…な。
[漁師は魚を取るが、それだけでは暮らしていけない。
そんな当たり前のことを再確認するのが、祭だと男は思っていた。
お世辞にも富んだ土地とはいえない。だからこそ、分け合って営んでいるのだと]
[アイノの声が震える。
夢ならいい。全く同じだ。夢でない、と突きつけることは残酷ではないかと思うが――それでは、
あの足の悪いウルスラが、伝えたいことが、きっと届かない。 そんな風に思えたのだ―ー]
[震える様子。肩に触れようと手を伸ばすも――透けてしまった。]
[死は接触すらも拒否する]
自分の、命で、遊ぶな、よ…
[レイヨの駆け出す先を見て。
生きていたら、今祭りの話をしていても。
やりたいことなど、たくさんあったのだ。
もう果たせない羨望に、声が低くなった]
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