…ん?
[手足はまだ冷たく、感覚は未だ重い。]
いいにおい…。
[何処からともなく漂うスパイシーな香りに、消化器官が先に反応したらしい。
…きゅうと小さく腹の虫。]
おなかすいた。
[まだ半分夢の中に居るかのようなおぼつかない足取りで、香りの源泉を探しにふらり。]
…や、平気。
[まだ動けるはずが無い、と耳元でキンキン騒ぐ声。
ぼんやりと返すと、人の気配のするドアを開ける。
キッチンには数人の姿。]
メシ、貰える?
…腹減っててさ。
…バク?
違うような気がするけど、君がそう呼びたいならそれでもいいよ。
[まだどこか遠くに居るような様子で、食卓で配膳を待つ。]
あぁ、ありがと。
[大盛りのカレーをのろのろと口に運んだ。
血の気の薄かった顔に少し赤みが差したかも。]
…きみは、要らないの?
あぁ、そうか…辛いより甘いが好き?
[少女の様子に気がついて、くすりと笑った。]
…アン、かな?
[またも呼ばれた違う名に、しばらくスプーンを咥えて思考。]
なん、だっけ。
[耳元でささやく言葉はキィキィとうるさく、要領を得ない。]
…どれ、大丈夫かね?
[スプーンを置いて、ライデンのところへ。]
たいした事無いと思うけど、頭打つと結構厄介だからね。
あまり痛むなら、冷やした方がいい。
後から段々痛くなったり吐き気やめまいが出たりしたら、必ず言って。
うっかり手遅れになってからじゃ不味いからさ。
[やけにてきぱきと処置。]