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回想・ロビー
[真心を伝えるのは難しい、
そう消沈する医師へ、眉尻を落とした]
いやァ… 俺ちはアンタさんみたいな学力はねェし
真心だってな…
結局伝え切れなかった、唯の人生の落伍者なんだァよ
[無力さを感じるのは自分の方だと、
ははは、と自嘲の笑みを零し]
んでも、俺ちは今…
先生の役に立てたのかね
だったらば、
……今日を生きた甲斐があるってもんだよ
[明日を生きる楽しみは?
あるのだろうか。
家族を失い、母を喪おうとする男の目の前に
明るい明日は、あるのだろうか。
今はこの若い医師の未来を思うことで満たそうと、
「んじゃあな、先生」と手を振り、別れを*告げた*]
朝の夢
[薄く積もった雪をさくり、さくりと踏みながら
男は今日も病院へ、母を見舞う。
今朝の病院は、スーツ姿の男性が多い気がして
「お偉いさんでも亡くなったのだろうか?」
なんて、ぼんやりと馳せた。
気のせいかもしれないけれど。
母は、ゆっくりと、ゆっくりと話してくれた。]
そうかァ、正月の夢、見たのかァ……
[嬉しそうな母の横顔にそうか、そうかと頷いた。]
[正月。
独り暮らしを始めた養女も戻り、
皆で新年を祝う。毎年の恒例行事だ。
この時ばかりは金がなくとも豪勢に。
朝風呂を終えたら、娘達の待ちに待っていた
お年玉を渡す。
そうしているうちに、母が我が家へやってくる。
迎えにいってやればいいものを
俺は既に飲んでいるから、母は徒歩で来るのだ。]
『あけまして おめでとうございます』
[新しい年の始まりを、家族皆で祝う喜び。
おせち料理。
雑煮。
母の炊いた赤飯。
母の笑顔。女房の笑顔。娘達の、笑顔。]
[あたたかい記憶の中
過ぎ去っていった過去は夢となり
時折、男の心を癒してくれる。
うつら、うつら。
病室を後にした男は
休憩室で微睡の中に*居た*]
休憩室
[うつら、うつら。
暖かな室内で優しい夢の中をたゆたう。
部屋の外で起こっていた悲しい出来事に気づけずに
最後に、思い出したのは若い先生の笑顔だった。
『十分、価値のある人生ですよ』
そうだ。
俺ちがここに在ることを
誰かが そう言ってくれるだけで――]
――…ん、むう…、
おお、おお。…ねてた、よ
おはよう、お嬢ちゃん
[腰掛けたまま眠っていたらしい。
人の気配に気づいて目を開ければ
正面には、小さな女の子の姿があった。
困惑気味の面持ちへ、にこりと眉尻を落とす]
起こしてくれたのかい。ありがとうな
[寝惚け眼を、ごしごし擦る。
寒い自室よりも暖かくて熟睡出来てしまい。
おずおずと此方を見遣る少女へと、
少し背筋を丸めて視線を合わせ]
そうか、そうか
こんなところで寝たらだめだなァ
おじいちゃん、ここがあったかいから
つい、寝ちまったよ
[気を使ってくれたのか、わざわざ「おじちゃん」と言い直してくれたので、「おじいちゃん」で良いのだと強調を。
孫達の中にもきっと、彼女と同じくらいの子がいるはずだから]
おお、るりちゃんはしゅづつをするのかい
えらいなあ
んだな、外は寒いよ
でも、雪はきれいでおじいちゃんは、すきだなァ
[ひらりひらり、雪の降る様子を真似る少女に
「上手だァなあ」と頷いて。
彼女を真似て、自分でも手をひらひらと振ってみたが]
あしたかァ…、そうかァ
[一瞬だけ、眉間に皺を刻んでしまう。
何の手術かは解らないが、こんなに小さいのに
痛い思いをするのかもしれないと思うと、苦しさを覚え]
しゅづつしたら、ゆきだるま作ったり
できるようになるだろうなァ
雪で、うさぎさんも作れるんだぞ〜?
[一生懸命話をしてくれる少女を
何時しか孫と重ねていた。
逢った事のない孫もきっと
こんな風に、人懐こい子達に違い無いと、思うのだ]
そうかァ、そうか…
げんきになったら、かんごしさんも
外で遊んでいいよ、って言ってくれるさね
うさぎさんと、……オリオンさんかい…?
[何処かで聞いたことのある単語だが、さて…
星に疎い男には、ピンと来なくて首を傾けた。
やがて、やって来た看護師に叱られる少女の姿を前に
「俺ちが引き止めちまったんで」と、看護師を嗜めた]
明日に、備えてか…、
おお、がんばれよ、明日な
[少女の小さな頭部をそっと、優しく撫でようとし]
[大人びた言い回しの裏に
本人や周囲の大人たちの苦労と痛みの痕が窺えた。
振り返りざまの言葉へ、暫し瞳を瞬かせたが]
おお、おお。いっしょにつくろうなァ
ゆきだるまと、ゆきうさぎさんなァ
おじいちゃんと一緒につくろうな、るりちゃん
[返答は、彼女の耳に届いただろうか。
まるでうさぎみたいに跳ねていってしまった小さな背へ
手を振り、見送った]
[ただ、そこに居るだけで周囲の空気を明るく変える、
そんな少女の存在が、昨日の光景を思い出す。
昨日、ここで話をした老女も
「子どもはいいね」と、そう言っていた。
彼等の先には、未来が続く。
まだ見えぬ道だからこそ、その先は明るく、心躍るのだろう。
老女の言葉を、思い出す。]
……そうさねェ、
かわいがってやりたいもんだがねェ…
[それは叶わぬ希望と知っているから、
過ぎ去っていった少女との約束を、守りたいと思っていた。]
あの婆さんも、誘ってみるかねェ
[今度会えたら。
逢えなくなる等と感じることなく、席を立った]
屋上
[凍てつく外気を肌に感じた瞬間に
ぐわんと頭痛が響き、軽い眩暈を覚える中
煙草を吸う為に屋上の扉を開いた。
視線の先、昨日の若い医師の姿を見つけて歩み寄り]
よう先生。アンタさんも煙草――…、
[吸うのかい、そう続けようとした言葉は
彼の、余りの憔悴ぶりに先を失ってしまい。
理由は解らずも、その肩を励ますように叩こうと手を伸ばす]
そうか、そうか
先生だって人間だもんなァ
逃避したくなる時だって、あるよナァ…
[ポン、と軽く肩を叩いて
彼と同じように笑い飛ばした。
けれど、昨日の何処か楽しそうな思案振りと
現在の彼、明らかに異なる様子に――
煙草に火を点けながら、ぽつりぽつりと言葉を紡いで]
なァ、先生は… ヒトは死んだらどうなると思うかい?
俺はね、「死ぬ事は、生まれ変わる為のきっかけ」だと思うんさね
[医師という視点からすれば、笑い飛ばされてしまうような内容だろう。
けれど、男にはずっと常に心にある思いであり、
そうであると、信じて生きてきたのだ]
善行を詰めば、次はより幸福な人間に生まれ変わる…
そんなこたァどうでもいい
ひとつだけ確かな事はな、現世で出逢った人間とは
縁を引き寄せれば必ずや、来世でもまた出逢える、ってことだ
だから、もしもアンタさんが…
来世でも出会いたいと思う人と
死に別れる事があったら
その人の事を忘れずに、命日には花を手向けてサ…
そうしたらきっとまた、逢えるよ
[持論でしかないけれど。
肺を煙で満たし、ゆっくりと吐き出しながら
医師へ、微笑んだ]
なァに、アンタさんは色男で頭がいい、
気の利いた台詞が浮かばなくても
相手が何を求めているのかを探ろうとする
そして、相手に答えたいという真摯な思いがある
[だから、心配するな、とばかりがははと笑い]
いやァ、俺ちはただの塗装工だァ
……明日辺り、仕事あればいいんだがなァ…
[詰まりは現状、無職にも同じだということ。
フィルターギリギリまで煙を味わい、灰皿へ吸殻を落とすと
「お先に」と声を掛け、屋上を後にした。
持論では、「生まれ変わる為の〜」そうは思っていても――
別れは、辛い。それは己とて、同じと*知りつつ*]
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