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[ず ずず、 ず
金属の錨のようなものを引き摺る、音。
男の足に繋がれたその重石はびっしりと付着した甲殻類で全貌が見えない。
古い呪いにふれた者、禁忌を犯した咎人の証。
上質だった仕立も今や立派な襤褸と化した。
男の歩みの遅さは、かつての優雅さとは程遠く、
しかしヒビの入った眼鏡をつい、と抑える指先は変わらぬ神経質さで隙間ない。]
あちらに私が行ったら、この桟橋は壊れそうだね。
[赤毛の男と同じく桟橋の先、檻を見やる]
しかし供儀とは、……ああ、実に興味深い。
[道を外れた知の探求者が吐く息は白く、しかしやたらと熱っぽい]
[女の悲鳴、自ずと視線を背ける。
再び毀れた吐息からなお、熱は消えず]
どちらかといえば四肢を裂いて投げ込む、というのが一般的な海への供儀だと思うのだがね。流血こそが儀式の聖化であり、人々の高揚をもって人ならざるものへ近づくことだと……
ああ、あれは――、
煮えたぎるように熱く、馨しく甘かった。
[ずず ず と金属の擦り引き摺る不快な音に、
同士でも見つけたような気安い言葉が重なった]
……君も興味があるのだろう、あれに。
[流木の傍らの赤毛の男、下腹を撫でるような仕草に視線は1度とどまる]
さて、あれが何に、
……どのように召されるのか。
[同意はあれど、その意が同じかは知れず。
ひび割れた眼鏡の奥の瞳には、陶酔の名残の揺らぎがある]
ああ、案外甘いと私は思ったよ。
……女の血肉というのはね。
[見遣る視線に、返す声音はかすれるような笑み交じり]
……どうやら君は、
空腹ゆえにアレを見ているわけでは、
なかったかな。
[擦れた笑みは喉に張り付くようなそれ。嫌悪の色に、くつりと鳴った]
それもまた、神聖なる儀式だったのだよ。
しかし、女に限らないというのであれば――…、
[硬質な、己の引き摺るものとは異なる音、ちらと一度その音の行方を盗み見る]
血肉を己が物とすることで、
その者の力をも己に取り込む。
私は実戦を旨とする探求者であってね。
[そして男は呪いに触れたが、一向に懲りてなどいない。背を向ける赤毛の青年をよそに檻へとまなざしを戻す]
……食いカスが出るのなら、
ご相伴いただくに不都合はないだろう。
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