情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
― 小屋 ―
[カタカタカタ…―――木の根をすり潰す作業に、一本だけ脚の短い机が立てる音。出来た物を移し変えて、似たような容器の横に並べる]
………
ドロテア…
[供犠の娘が今ごろ何を想い何をしているかは知らずも、彼女と引き換えに与えられた時間は過ぎていく。躊躇いがちに手を伸ばす容器は薄く埃を被り、長い間触れられていなかったもの。
中にあるものを自らに言い聞かせるように容器をなぞるだけで、前髪の奥で眉根が寄る。蓋を開ける事もなく手を離すと、容器には手指の跡が残った]
…………
[やまぬ遠吠えと焔の燃える音に混じり、足音が近づいてくるのに扉に顔を向ける。テントでの発言から誰か来るかもと意識していなければ、遠吠えにまぎれて聞き逃していたかも知れない。
かけられる声もなく扉を叩く音もないのに、トゥーリッキとマティアスの会話を思い出しもする。中の様子を伺っているのかと、扉を見る間]
開いてます。
宜しければどうぞお入り下さい。
………そうかも知れません。
[扉の向こうから届く声を聴けば、先に思い出していた人物。けれど寒い外に立っていた理由を疑うでもなく、なんと挨拶するべきか同じく思案して結局は同意だけ示した]
ひとりです。
道中ですれ違われなかったなら…
テントに戻られたのでもないのでしょうね。
温かいお茶を煎れますから。
火の傍へどうぞ。
[見るからに寒そうな装いのマティアスに火の傍を勧めても、殊更に手を引き助ける事はせず。キィキィキィキィ―――来訪者を迎えるべく、茶を煎れながら誰とは語らずもトゥーリッキの事も添えておく]
…そうですか。
[話題に上るトゥーリッキの時と違い火もあり、先に沸かしたばかりの湯はまだ温かかったから茶の出るまでの時間も短い。キィキィキィ…―――車椅子は壁際のマティアスに近づき、口を開こうとしたところで先に言葉をかけられた]
何でしょう。
僕に答えられる事でしたら。
…お茶です。
[断ってからカップを渡そうと盲目の彼の手を取ると、外気に冷やされ少なくとも表面はつめたい。温める役割は茶に任せ、彼の手にカップを収めて手を放した]
…………
[キィ…―――マティアスが言葉を続けるより先に茶を啜るなら、急かす素振りもなく車椅子を少しだけ引く。トゥーリッキの分と一緒に煎れた自らの分の茶は冷めていたから、眼鏡の曇る事はなかった]
………そうですね。
僕は皆さんにそうお訊ねしました。
[到着前の事まではわからずも、周囲の反応からはその話題が出ていた印象は受けなかった。低い声の紡ぐ確認めく問いに、肯定を返すのは折と同じく静かな口調]
どうしてですか?
[目の見えぬ彼に対して声で応えず、沈黙に瞬きだけ添えたのは、意識の半ばを問われた内容に対する思索に向けていたから。冷めた茶を啜る間も、彼を見ていた]
…ありがとうございます。
[開いた口から最初に零れたのは謝辞。カップを机に置くのは見えずも、カタと言う机の揺れる音は彼にも聴こえただろう]
ひとつには、皆さんの反応を確かめさせて貰いました。
もうひとつには、叶うなら―――…僕が代わろうと…
結局のところ叶いませんでしたが。
でも叶わず安心したのも確かなんです。
ひどい話です。
…………
[謝辞に籠められる意は互いに口にはせず、受け取るのは目礼だから彼には見えないのだけれど。見上げるマティアスの耳元で、トゥーリッキの呼ばわる49のプレートが揺れるのに、眼鏡の奥で眼差しを細めた]
―――…
そうなのかも知れません。
[…残酷です、と零す声音は独り言めき、マティアスや群れの者たちを詰る響きはない。曇りもせぬ眼鏡をはずしつるの端に歯を立てながら、滲む視界に彼を捉える]
…僕からもひとつお訊ねしていいですか?
お茶は寒い中で足を運んで下さった分です。
―――…、………
[マティアスの気遣いには幾らか穏やかな声を返すも、肯定を示す頷きと視線こそなくも向けられる顔に、問うと言った割りに長い沈黙。問う内容は定まれど言葉を探す間を置き、眼鏡をかけ直し瞬いた]
差し支えなければ…
その数字の意味を。
[長い沈黙を急かさずも無理に問う気はないから、口を開きかけたところで低い声。語られる間はマティアスの顔ではなく、耳元で揺れる飾りを見ていた。
浮かぶ疑問もあれど問いはひとつと先に断ったからか、告白を添えてくれた彼に更に問う事はしない。彼が語り終えてもすぐには言葉を返さず、眼差しを細め小さな告白を裡に反芻する]
…お呼びする名、今は変更せずおかせて下さい。
お訊ねしておいてすみません。
[マティアスの両耳にかかる重さを想えど、語らずに仕舞い置く。キィキィキィ…――謝辞は紡がず、彼の手の中のカップへ注ぎ足す温かい茶に籠めた。
視線の交わる事はなくも、交わす言葉があれば訥々と語る声。彼が小屋を出る折にはアルマウェルはまだテントにいたか問い、薄着の彼へ膝掛けを*差し出すだろう*]
そうですか…
ありがとうございます。
…………
あの方宛に言伝を届けて頂くのも面白いですかね。
いえ、折には自分で出向きます。
[少なくとも自分がテントを出てからのアルマウェルの所在を知り、思案するらしきは声音にも滲んだか。マティアスがこれから向かう先もわからぬし行く先を問う事はせず、冗談めかぬ口調で嘯いた]
マティアスが少しでも和らいで下されば幸いです。
[名に対する彼の言葉に対する応えを遅ればせながら添える態で、あまり呼ばわらぬ他者の名を紡ぐ。膝掛けを渡した彼を見送る折に向けた眼鏡の奥の眼差しは、謝罪を容れられなかった時と同じように細まり、似た穏やかさを浮かべた]
…………
[キィキィキィ…―――マティアスの去ってから、アルマウェルの報せを受けた後と同じように、暫くの間は焔を見ていた。静かなはずの小屋にも狼の遠吠えは届き、時の流れと共にじりじりと募る焦燥感を冷え切った茶で飲み下した]
………信じられるのは…―――
[キィ…キィキィキィ―――呟きは掠れ、車椅子に座す求道者は来訪者を待つ時を休み扉を開ける。膝掛けの無い分だけ余計に冷気が刺さるけれど、曇る眼鏡をはずさず袖口で拭い、再び不吉な紅いオーロラの靡く夜に出た]
あれは…
[キィキィキィキィ…―――二本の跡を残しながら進む先に、遠く列なす明かりの揺らめきを見る。列が何を意味するものか悟るのに暇はいらず、前髪の奥で眉を顰め口元を引き結んだ]
………どうして…―――
[キィキィキィ…―――誰の何に対してか、掠れた声が車椅子の音に重なる。車輪を操る手が震え、道行の途中で車椅子は止まった]
[キィキィキィキィ…―――目的地たる長老のテントが見える頃には、列は遠のいていた。表に不吉なカーテンとも似る紅いアルマウェルの姿を見て、言葉はかけず注意を向けられれば目礼だけ置き近くまで寄り、遠ざかる列へと顔を向ける]
…いかないんですか?
…そうですね。
[視線を感じて顔で無く視線だけを向けると、アルマウェルの瞳に浮かぶ憂いの色。瞬きに交わす眼差しは途切れ、列を見たまま眼鏡の奥で眼差しを細めた]
見つけないと…
出来る事…
あるとすれば見届ける事くらいでしょうか。
[アルマウェルに語られぬものを車椅子に座す求道者もまた紡ぎはせず、考えだけを言葉にする。言う割りに見届けに向かう素振りはなく、冷えた手に息を吹きかけた]
血を以て血を…―――
[向けられる顔にアルマウェルに顔を向け、空を仰ぐ彼の横顔を見上げる。確信か仮定か定まらぬアルマウェルの言葉をなぞり、彼とは逆に項垂れるように俯いた]
…………
貴方の仰る 苦痛 が何を指すのか。
僕にはわからないですけど…
見据える先が違わぬ事を願います。
[寒さに身体の先端が痛み出すころ今度はアルマウェルに顔を向け、彼の顔を見上げる。眉の下がるのは前髪に隠れども、面持ちまでは隠せない]
[1] [2] [3] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了