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誰かいますかいませんかー
[いつも店先にいる骨董屋さんの姿は見えなくて]
お出かけ中かなあ。
[ポケットから黒い写真をとりだして、同じように見える場所を探しながらその場をうろうろ*]
じゃぁ、ご主人さまが帰ってきたら。
教えてちょうだいね?
[手入れの行き届いた毛並みを、ひと撫ぜ。]
それと、お利口さんなハナシロには、ご褒美ね。
嫌ならすぐに解けるように、しておくわ。
[鞄から取り出したのは、幅の細い緑のリボン。
軽く首に結わいてあげて。
かざりには、恋告げ草の、花ひとつ*]
[キッ、と短く自転車のブレーキが鳴る。
しばらくして、がさがさとビニール袋が音を立てる]
すみません、つぐみ堂です。
カツ丼3人前お持ちしましたー。
[その声に反応したのは見慣れない男、警部殿だ]
……やぁれやれ、だなぁ。
[編集部とのやり取りの後。
はー、とため息をついて、頭を掻く。
それから、煙草の箱に手を伸ばし。
かきん、と小気味良い音と共に紫煙を立ち昇らせた]
ま、編集不在じゃ仕方ない。
取りあえず、気分切り替えてくる、か。
[例によって乾いた金属音を立てて降りていく。
例によってそこにいるのは大家と階下の住人]
おはよーございます、と。
……今日は、失踪したひとの話って、ないんですか?
[例によっての挨拶の後、問いを投げかけて]
[聞いてはみたが、特にそれらしい話はない様子。
それに、ほっとするやらなんやらしていたら]
……あー、うん。
どうも、そうらしいです、ねぇ。
[話題に上がるのは、警察に新たな参考人が、という話題。
先の編集部との電話でもちらりと聞かされていた話題。
……あんまり首突っ込んで、自分まで呼ばれるな、と釘を刺された話題……なのは、余談]
[警部殿は娘にねぎらいの言葉をかけて
代金を支払う。
カツ丼と、依頼があれば領収書も渡して]
最近カツ丼が流行ってるんですか?
昨日も注文ありましたし。
[警部殿は娘の問いに
「まあそんなところだな」と曖昧な答えを返す]
でも栄養バランス偏りますよ。
よければサラダやみそ汁もあるんで
そちらも買っていってくださいね。
[しっかり宣伝したところで、
見覚えのない黒いフクロウの置物が目に入る。
警部殿に尋ねれば、そのいきさつを知って]
……まあ、ほら、事情通ですからね、やっぱり。
[しかし、事情通というだけなら、この大家と主婦の方がよっぽど、と思うのだが如何なものか。
と、そんな疑問を飛ばす相手は生憎とおらず。
散歩してきます、と軽く言いながらひら、と手を振り歩き出した]
そういえばフクロウって、
学問以外にもいろんな事の象徴になってますよね。
「不苦労」で厄除けとか、
「福老」で長寿とか。
あと首がよく回るから商売繁盛とか。
……警察の商売繁盛は内心複雑ですけどね。
[ちらりと空き地の方を見やって苦笑する。
一部では不吉の象徴になっているとは、
さすがに言わなかったが]
とはいうものの。
どーこいったもんかなぁ。
[散歩に、と出てきたものの、宛てはなく。
往来をふらり、歩きながらあれこれと考えを巡らせる]
……『関わり』あるのはひとつは消えて。
今日、消えたのは、『関わり』ない、ねぇ。
[金槌が重いので、小さいのにして貰った]
まあ、牛は倒せそうだ。
[鞄にしまいしまいして、
鞄の中の持ち物を一つ一つ確認。]
揃った。
[おつかいのまま、まっすぐ家に帰るのは
何となく気が向かなくて。
慣れた道をぷらりと歩く。
空き地の事も気になるが、
また誰かが居なくなっているのを知るのが怖くて。]
人身御供で、いったい何が起きると言うの?
亡くなったひとが生き返るわけもなく、
また、何かが静まるわけでも無さそうなのに…。
[無意識の内に、当てもなくこぼす、推測。]
[複雑なもんだな、と呟く警部殿。
ふと気づいたように]
あ……長話しちゃいましたね、
この忙しい時にすみません。
ではありがとうございました。
[去り際に空地をさりげなく見やる。
次の骨は、確かにそこにあった]
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