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[暫く腕組みをして俯いたまま座席に沈み込んでいたが、おもむろに己の鞄を探り、A3サイズのスケッチブックを取り出す。教員室へ質問に来た生徒たちに説明するときに、簡易黒板がわりに使用していたものだ。
取り出した拍子に、公園で拾ったロッカの絵がひらりと舞い落ちる。ロッカがそれに気づくようなら、何か会話を交わしたかもしれない]
そこそこ納得いってる奴も、なんだかちんぷんかんぷんな奴も居るようだが。今、俺が大切だと思っていることを話しておくぞ。
[自分の隣にスケッチブックを置くと、まるで塾の授業をするかのように流暢に語りながら要点をまとめ始める]
ひとつ、鬼は既に活動を始めている。既に二宮がやられているからな。いつになるかは知らんが、俺たちのうちの誰かが次にやられる。これをまず頭に入れて欲しい。
ふたつ、例の声によれば、鬼を見つけ出す能力のある者がいる。この人物に名乗り出てもらうべきか否か、全員の意見を聞きたい。
みっつ、今から誰を――、誰に、隣の車両に移ってもらうかを決めるべきだ。
[「誰を処刑するか」と言いかけて、少し言葉を変えた。結局のところは同じ結果になるのだろうと思いつつ、同意を求めるようにバクに視線をやる]
ばらばらに投票することは得策ではない。鬼の組織票にやられる可能性がある。
[そこまで語り終えたときには、ふだん黒板に書かれているのと何ら変わりないように見える丁寧な板書ができあがっていた。異なるのは、その内容がとても教科科目には思えぬほど物騒なしろものだということだけで。]
[六花との話を終え、暫く後。
おもむろに口を開く。]
…そうそう。
さっきの変な声が言ってた、力がどうとか…って話。
あれが全部本当と仮定して話すけれど。
今うかつに名乗るのは危険な気がするの。
その…二宮さんみたいになるかもしれないと思うと、怖いから。
疑われて隣の車両に行くよう言われない限りは、少しの間黙っている方がいいのかしらと思ったの。
[倒れた二宮の方は、もう見ない。]
勿論、ただ黙っているだけじゃ危ないから…紙とペンで何かしらの痕跡を残せたらと。
少なくとも見分ける目、だとかあとひとつ何かしら調べる方法を持っているなら、ね。
反対意見があるなら、教えてね。
[主に、同僚の須藤と生徒達に向けた言葉。
近藤には、未だどう接するべきか考えている様子だった。**]
[鬼火の言う通りなら、もしかしたら小鳥遊の中に鬼が潜んでいるのかもしれない。
だが、目線を合わせながら柔らかく返答してくれる声に今は少し癒された]
うん、信じたくないけど、でもあの火、怖いのね。
ここも変なのね。
[いきなりこの場所に居たという状況、先ほど寺崎が窓を殴ってもビクともしなかった]
隣の車両にバイバイする人、考えるのね。
[車両を移ってもらうということに賛同するように頷いた]
[小鳥遊と話していると近藤が動くのが見えた。そのカバンから落ちた絵を見て反応する]
あ!ロッカの絵なのね!
[自分のカバンの中身を見て落ちた絵が入っていないことに気づき、慌てて拾いに行く]
オジさん、拾ってくれたの?
ありがとうございます。
[他の人とは違う雰囲気に少々物怖じしつつ、お辞儀をした。何か声をかけられれば会話をするだろう。
それから近藤のやるべきことについての話に耳を傾けた]
[また誰かが狙われるという言葉にビクリとする。二宮だけでなく、また誰かがあのような姿になってしまうのだろうか…。
無意識に小春の服の裾を握りしめていた]
んっとね、六花は見分ける目か、聞ける耳のどっちか片方は言ってほしいのね。
今のままじゃ何も分からないのね。でも、皆一気に名乗っちゃうと鬼さんに狙われるんじゃないかって思うのね。だから、どっちかなの。
六花はどっちかというと見える目の人が出てきたほうがいいと思うのね。
[一生懸命考えながら言葉を紡ぎ出す]
そしてね、投票?って紙に書くのよね?
耳の人はそれで分かるようにしたらいいと思うのね。
[なんとか一通り話終えると息をついて壁に凭れた**]
[小鳥遊から借りた水筒で茶を一口頂く。
すぐに持ち主にそれを返すと、塾講師と名乗った近藤と共に二宮の遺体を座席シートへと移した]
……。
[青ざめ物言わぬ顔は眠っているようだ。授業の時を始め、生前の様子を知っている故か、痛ましくてたまらない。
今いる状況から帰れたとして、保護者にどう説明をつければいいのだろう]
[だがそれを悩むのも、ここから出た後の事だ。
どうやら、半年前の青玲学園で起きた事がこの身の上に現実として起きているのだと自覚をする。
椎名の豹変や、この状況を待ち望んでいたかのような近藤の態度は怪しいが、少なくとも戯言ではなさそうだと解釈する]
…これも、使おうか。
[スケッチブックを取り出し講釈を垂れる近藤の後で、ポケットから手のひらに収まる大きさのボイスレコーダーを取り出す。
パトロールの際、万が一有事が起きた時のために、情況証拠を保存しておくための備品として、学園で配布したものだった]
まだ混乱して、状況が把握できない生徒も居るだろう。
落ち着けたら後で会話を遡れるように。操作が分からなかったら、先生に聞いてくれ。
[既に死人が出ている状況が現実だと受け入れざるを得ないのであれば、この状況から打開する策を講ずる必要がある。
不安そうな顔を向ける生徒たちに、繰り返し案ずるなと頷き返す。
こうなるきっかけとなった深夜外出に関しては、無事に帰れた後でみっちり小言をくれてやればいい。
同僚の小鳥遊や生徒たちに向けて、空いている座席へと腰を下ろすように促す。
座るという行為だけで、いくらか落ち着けそうな気がした]
[「座ろ?」と座席を示して弓槻に尋ねたが、どうするかは彼が決めることだろう。
座って深くため息を吐いて頬を抓る。
夢じゃないことだけは確かのようだ。
ぼんやりと周りを見て
暫くの後、近藤の声が聞こえ、聞き入った。
「次に誰かがやられる。」
その言葉を聞いて、表情を硬くした。
小鳥遊の声や村瀬の声が聞こえ耳を傾ける。]
ん。
私は見分ける目の人は名乗ってもらうのがいいと思う。
耳のどうのこうの人は紙に書いて名乗ってもらうべきかしらね。
どっちにせよ、黙っているよりは…名乗ってもらったほうがいいと思うよ。
二宮をこうした元凶…あの鬼火を操る者がいる。
[得体のしれない何か。頭の中に直接訴えかけてきた声に従うと、どうやら何かしらの手を打たないと、自分たちも二宮の後に続く事になるらしい。
周囲を見回す。
どうやら、それを執り行う人物がこの中に二人、含まれている…と。
ほとんどが今日、学校で会った生徒たちばかりだ。今は皆パニックに陥っているが、その様子は平常に居た姿からは何らかけ離れてはいない]
…つまり、見た目にはすぐに分からないって事か。
それを見極めるためには、特殊な能力が要る…。なるほど、…つまり俺たちの対抗手段は、その能力って事なのか。
[頭の中を整理しながら自然と独り言が漏れる]
あー…俺も…いや、先生もその意見に賛成だ。
ひとまず、見える者だけ名乗りでればいいかと思う。
[小鳥遊や村瀬、櫻木の声の後で同意を示し頷く]
本当は全員把握したい所だがな…鬼の立場からすれば、能力を持つ者は邪魔だろう。
邪魔を排除しようと、…二宮と同じ目に合わせないとも限らない。
…で、隣の車両へ移る者を各自が希望を出し、投票する。
同じやり方で、聞く者がどうにかして名乗り出る。
[投票で決めた人物を隣の車両へ移らせるというやり方が、果たして正しいのか分からない。
ただ、鬼と疑わしい人物を何らかの方法でこの場から外さねばならない、という使命感に似たようなものは抱いている]
…こんな状況だが、少しでも休める者は休んでくれ。
投票で誰かを移らせる…というのは、よく見極めなければならない。少しでも冷静に…取り乱したら、鬼の思うツボだからな。
[少し前の自分にも言い聞かせるように伝えると、シートに深く腰を埋めて瞑目した。
眼の奥に圧すような痛み。頭が鉛のように重かった]
[この状況になれるには、もう少し時間がかかりそうだ。
だが、次の鬼火が現れる前に…──敵が仕掛けてくるなら、必ずあの炎は現れるだろう──手を打たねばならない]
やられる前に…やらないと…
[周囲の会話に耳を傾けているうちに、疲労からか、わずかな間だけ意識が遠ざかる。
もう少し、色んな人物の声が聞きたいと願いつつ、その間の会話はボイスレコーダーに拾わせる事にして、しばし休息を取る事にした。**]
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