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キタネ…
キタネ…
クス… クス… クス…
[耳に飛び込む声に歯の根が合わず、ガチガチと音を立てる。
人体模型の目から目を離すこともできない。]
―――――…ッ!!!
[声にならない叫び声。と、同時に全身に激痛が走る。
校舎に入るところから記憶がなく、気づいたら準備室にいた。
そして、耐え難い恐怖と苦痛に晒され…
...は錯乱状態に陥る]
[一緒に行こうという声とは別の声が聞こえる]
「痛いのが辛いなら
連れていってくれと頼むが良い
楽になるぞ」
楽に…なる…?
楽に…なる…のか…?
[やがて理科室の前に到着して。ナオが準備室の扉に手を掛けるのを見ると、すぐに後から入れるようにと歩み寄っていき――]
!? ……
[瞬間、ナオを押し退けてセイジがその扉を開けた。そして、中へと入っていった。素早く、何処か不自然に。見えない何かに引きずり込まれるかのように]
セイジ!
何してん、いきなり……
[よろけ下がったナオを一瞥してから、扉に手を掛ける。そのまま開こうとした、が、鍵のかけられていない筈の扉は、しかし先の教室の窓のように、びくともせず。
ガチャガチャという空転する音ばかりが、あちら側から扉を開く音と共に響き]
[此方側からあちら側から、開こうとしようと叩こうとしようと、扉はびくともしない。ヨシアキが近付いてきたなら試みるのを譲ったが、彼がやっても――誰がやっても――結果は同じ事だっただろう]
っ……
おい、セイジ! セイジっ!
[聞こえてくる叫び声に、祈る思いで名を呼んで*]
[ナオを追って理科室にたどり着く。
理科準備室の扉を開けようとしたナオだが中に入ったのは割り込んだセイジだった]
・・・
[中から叫び声が聞こえる。中から扉を必死に開けようとしてるのが分かる。でも開かない、開かない]
また・・・なの・・・
[必死にセイジの名前を呼ぶマシロの後ろで、タカハルはそう呟いた]
[がちゃがちゃ、がちゃがちゃ
マシロから交代した、ドアを開く試み
だが、押しても引いてもドアは開かずに]
おい、セイジ…――――!
[叫ぶ声も、届くかどうかわからない
どんどん、どんどん
ドアを叩いてみるけれど、弾かれてしまう]
くそ…――――
[不意に片手が自らの意志と関係なく持ち上がる。
指先が切られるような感覚がしたが、それ以前に体中の激痛により、その痛みを認識することはなかった]
“言葉は契約、願いは呪力”
[...の指が勝手に床を這う]
[血に塗れた指は勝手に床を這い、
言葉を紡いでゆく]
“祈りは糧にして、恐怖は甘味”
“理を知らぬ者に、亡者の手を”
[すでに...の意識はほとんどなかった]
[次に扉を開けた者は、この言葉が...の血によって、
床に綴られているのを目の当たりにするだろう]
“ 言葉は契約、願いは呪力
祈りは糧にして、恐怖は甘味
理を知らぬ者に、亡者の手を ”
[この意味を理解する時、…何を思うのだろうか]
コトバハ…
ケイヤク…
ナンダヨ…
[模型が...に吸い寄せられるように“入り込む”]
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
[断末魔の叫びを残して、...は…消えた]
[ヨシアキとマシロが必死にドアと叩いているときに呆然と突っ立っていることしか出来なかった]
[その時、一段と強い叫び声が]
[タカハルは一瞬ビクッとして・・・そしてすぐに感じた]
[あぁ・・・もう・・・]
[それでも、なにもすることが出来なかった]
[連れて行ってくれ。そんな声が聞こえた。何処か遠く、軋むような、ノイズに割れた音のように。それからまた、叫び声が――激しい、一際大きな叫び声が、聞こえて]
セイジ……!
[名を呼ぶ声は、空しく空間に響き]
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