[1] 絞り込み / 発言欄へ
[チカノの言いなりになって、駆け出したナオを。
私は止めなかった。むしろ自分の状況がとりあえず無事になるだろうと思い、胸を撫で下ろした。
卑怯だな。
自嘲した。
その矢先に見えた、サヨの頭が転がっている光景も。
私はただ、見送った。]
[「3分間だけヒーローになれた」。
それはサヨに似つかわしくない言葉だから。
私は空耳だろうと思うことにした。
たった数分の間、アンが生首になり、更にサヨまで生首姿になった。そんな状況下で冷静で居られるはずもない。]
ねぇ、エレベーターが無事一階に着いたらさ、ナオが食べたがっていた「「あみん」のパンプキンパイ」、買いに――…
[室内にはもう、強制退去を命ずる声はなく。ただ警告を告げるようなブザー音だけなっている。
私は憔悴しきった顔で二人を見ようとしたが。]
――…あのさ、私が何をしたっていうのよ。
[まるで壊れた機械人形のように、額へと手刀を繰り返すチカノに。私は呆れながら文句を言った。]
知ってるよ。霊能とかっていう奴だろ?
夏にお誂え向きの話の延長かと思ってたが…気でも触れたか?
[そう、さっき確かにチカノは言っていた。
悪戯する者が判る、と。]
それと、誰かが犯人ってさ…
[私はヒールを軸にくるりと向きを変え、ワカバを見つめた。]
なぜこの中に犯人がいるって思えるのかな?
こんな狭い部屋に居るのに。首だけ先に置ける訳ないでしょうに。
マシロ? …誰、それ。
愉しいね。嬉しくて仕方がない。
追い出す理由? 理由なんて無意味だ、ワカバ。
だって、次の階で、君は「私」に追い出され――
チカノが首になるんだから。
[きっと、長い髪は美しく扇状に広がるのだろうと。
チカノへと伸ばす指先に力が入る。]
それはそうと。君を残した理由はな、
鬼ごっこをするには鬼と、追う者が必要だ。
ただ、*それだけだよ*
[1] 絞り込み / 発言欄へ