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えーん、えーん……
[あの日、泣きじゃくる自分の小さな手を引いていたのは、これまた小さな少女の手。
その手がひどく冷たかったことが、思い出される]
ここは?
(よじょうはん)
[はずむ声でそう言った、少女の顔は影になっていて見えない。
部屋の中に入ると、そこには知らない大人がいた]
誰?
[その部屋は、きらきらと*まばゆい*]
[こつん、つま先がぶつかる何か]
おめでとうなんて言って欲しくなかったのに……
[床に転がる[フォーク]は、あの日よりも小さく見える]
[土に汚れた手でこすった頬もまた薄汚れる。
泣きそうな顔で笑った]
なんだよこれ。
[中に入っていたのは、こども用の電車の切符]
[あの頃よりも大きくなったような、変わっていないような、桜の木に近づいてその樹を撫でた]
ここにくれば会えるんじゃないかって、思っていたんじゃないんだ。
[涙を堪えてしゃがむと、視界に傷跡が入る。
樹に彫られた、おさない文字の相合傘]
ここに来たら、会えないって認めなきゃいけないんだって、思ってた。
僕は今でも、君のことが好きなんだと思う。
ごめんね。
[強く吹いた風が桜の花びらを散らした。
蓋を閉じた小箱の中には、きっぷと、それから花びら]
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