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[最後にやってきたゾウサクに挨拶をして]
まさか道端で全員集合するとは思いませんでしたけどね。
[以前とは違いひとり足りないことをにおわせる]
[病院のベッドに横たわる相棒。
枕元にはよくドラマで見る心電図が
ピーッ、ピーッと長い間を取って
音を鳴らしている。
レンがそこに駆け込んでくると、
それまで閉じていた病人の目が薄く開いた。
そこで、レンに向かって囁くような声で]
……大丈夫、だったか?
ああ、もうバッチリだったよ!
そんなことより、まずお前が病気直さないと
何にもならないだろうが!
[自分の命よりも番組オーディションの方が
大事だと言わんばかりの態度でいる相棒に
怒鳴りつける。
落ち付いてください、という
医者の注意で我に返って]
[怒鳴りつけられても
相棒は意に介することなく。
いや――既に喋る気力すらない状態だった。
会話ができるのも奇跡的と言えるような]
……よかった。
もう少しだけ待ってくれたら俺も……
いくから。
せっかく、だから……
やろうぜ、新ネタ。
……あのかえるのTシャツ、
捨ててないよな?
[力なく微笑んだ次の瞬間。
心電図の音が変化する。
かける言葉が見つからないレンに
相棒は続けて話す]
……ありがとう。
お前のような相方がいて、俺は、
幸せ『だった』よ。
[それだけ言って目を伏せる。
最後だった。
心電図は一定の音を立てたまま。
体のどこもピクリとも動かず。
そのうち温もりも消えてしまうだろう]
……なんなんだよ。
そっちから誘っておいて。
ネタもろくに書けない癖に。
ひとりじゃ何もできない癖に。
ひとりで勝手に行くんじゃねえよ!!
[罵ろうと怒鳴ろうと、行った彼は戻らない]
[そこで目が覚めた。
何年前のことだったろうかは思い出せないが
確かにそれは――]
これが……?
俺の探してた「思い出」?
[それを受け入れてる自分が不思議だった。
対価の有無を確認するより先に
まずマネージャーに電話をかけた]
[電話に出た女性マネージャーは
コンビ時代からの付き合いだ。
聞けば教えてくれるはずで。
電話に出たマネージャーはいつもの調子で]
「おはよう。
って今日は確か完全オフでしょ?何?」
[一呼吸置いて、昔の相棒の話を切り出す]
……生きてないんだよね?
[マネージャーはその言葉を聞いて
ふ、と息をつく]
「……ようやく受け入れてくれるんだ。
そう、病気でね。
アンタがずっと『あいつはお笑いやめて
実家に帰ったんだ』って真面目な顔して
言ってるのが痛々しくてさ……
あたしは何も言えなかった」
「あたしだって信じたくなかったけど……
現実は変えようがないしね。
せめて墓参りぐらいはしてやんなよ。
寂しがってるよ、きっと。
好物のチロルチョコぐらい持ってさ」
[マネージャーの語る話を
レンは時折相槌を入れながら聞いていた]
……分かった。ありがとう。
「明日からはちゃんとしてよ。
間違っても泣きはらした顔で来ないように!
それじゃね」
[マネージャーはきっちり釘をさして
電話を切った。
そして彼は、まず横丁へと向かう]
[駄菓子屋にあるチロルチョコは
コンビニと比べれば種類も少なくて
ふーむと唸る]
あいつがよく食べてたのなんだっけ……。
違うパッケージのしかないな。
ああ、そうだあれだよ!ミルク!
[しかしどれだけ探しても
小さい牛柄は見つからない。
しかし片隅に何かを見つけて、悪い笑みが浮かぶ]
あれ、50個ほど買ってもいいですか?
[その片隅を指さして、大人買いの準備をした]
[断る理由もない店主の老爺は、
代金を受け取ると小さなポリ袋に
それをきっちり50個入れてレンに渡す]
ありがとうございました。
[どちらかと言えば店主が言うべき台詞を
行って、外へと出る]
[横丁を出ようと歩いていると、
難しい顔で本を見ているゾウサクを見つける]
あれ、ゾウサクさん?
歩きながら本読んでいると危ないですよ。
いや、俺はバック転できませんし。
バック転してたのは呉服屋の主人ですよ。
芸人は間違いないですけど。
[さらりと修正して改めて挨拶をする]
こんにちは、今日はどうしたんですか?
仕事、って感じじゃなさそうですけど。
[ゾウサクが夢中になっている
本の表紙を見ながらそう言って]
自家製のどら焼きですか!
凄いなあ……。
お母さんもよく作れましたね。
うちじゃホットケーキぐらいでしたから。
[手製のどら焼きを食べたことのない
レンからは驚きと感心を交えた感想が出る。
続くゾウサクからの問いには]
買占め、って言うのは人聞きが悪いですよ。
売れ残りの在庫処分に協力したんです。
あまり子供に人気のなさそうな味ですしね。
[中のチロルチョコは全部コーヒーヌガー味だった]
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