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[天を仰ぐ]
なあ。
ワシらを、ほんまに匿ってくれとるんなら。
神さま。
こんなときばっかり祈って、勝手じゃけど。
ワシより、みなのこと、護ってくれや……!
[まるで、応えるかのように。トランクから飛び立った紫色の蜂たちが、ギンスイの周りを包む。それから、空へと舞い上がった]
……綺麗、じゃのう。
[天に舞う、色とりどりの蜂たちに、地上からしばし見とれる]
ほんまに、神さまが、力貸してくれとるんんじゃろか。
[ひとつ、息をついて。ヌイとセイジの後を追い、河原へ]
何べんも来たことある河原に、よう知っとるみなの顔。
何で、知らん奴みたいに見えるのがおるんじゃろ。
タカハルの声にも、雑音が入りよる。
さっきのボタン婆ちゃんと、やっぱりおんなじじゃのう。
セイジの、声は、
何でじゃろ。セイジの声とは違うとるのに、よう聞こえる。
ンガムラさんは……
いつもの、ンガムラさんじゃ。
[小さく、笑みを浮かべる]
…はあ、はあっ……セイジくんを……助け……
あ……ヌイさん、セイジくん、あっちに……
[視界にヌイを捕らえて。>>31ヌイが「アン」と呟いたあとに向かうその方向、セイジのいるほうへ。息を切らしてふらふらになりながら、自転車について走る。]
セイジくんのとこ…いかなきゃ…はあっ………もうっ……透けたり眠くならなかったりするのに走ると疲れるなんてどーゆー仕組みなのよこの体ああっ!
[自分に渇を入れるように叫んだその時。]
きゃっ!?
[>>+15どんっ!と誰かにぶつかり派手に転んだ。]
いったあ……何よなんでぶつかるのよぉ…!
……ボタンお婆ちゃん?
『……けど、完全に忘れ去られるよりは、
遠足や運動会の前日だけでも光をあててもらえるほうがまだいいわね。
このところ、あんまり雨降らなくって……
わたしへの祈りも、格段に少なくなってしまって……』
……気持ち?
[きょとん。そのナニカは、移民の男の憤りは解さず]
[それでも声のトーンが落ちた時、手元からセイジが引き抜かれる。]
『ぷーぷー 触れちゃいけないのかしら。』
[頬を膨らませた気配で、
構ってほしそうにセイジを見やる。]
『……そりゃあ、命がけなんて、馬鹿馬鹿しいわ。』
[ヌイの手が、ボタンの頬をなぞると、]
ヌイ坊…?
[初めてヌイの声を認識したように目を瞬く。]
いや、トランクスで作られるのには同情するがなぁ。
ええか? おまえさん、
物を最後まで、だいじにすんのがな、何よりじゃてな。
そこがわからんうちは、まだまだじゃ。
[移民の男の願いとは大幅にずれているだろうが、とりあえず声を叱りつけた。]
『わたしは ただ くやしくて かなしかった だけよ 』
[ふと声がくぐもる。]
『相容れないなら、別にいいわ、
ただ、ここにいては、わたしは なにも できないから…
ねえ、あのひとを 笑わせてあげて?』
[ナニカはヌイだけではなく、通りを、村中を見回す。]
『それなら、引き受けてくれる? 』
……っ。なんですり抜けな…っ…耳、変……?
[ボタンが口を動かす度に、耳にざわざわとした不快感。セイジの言っていた「疑え」が蘇り。>>+16その手が自分の頭に一瞬触れた時]
……あなた、だれ?
[ノイズが消えた瞬間聞こえた言葉は>>+17>>+18ボタンの声ではないもの。突然音がクリアに聞こえるようになり、思わず辺りを見回すと、セイジとヌイがいるあんころ餅屋の前。自分に触れた何かをキッ!と睨んで]
あなた、ボタン婆ちゃんじゃないでしょ…!なんか変な感じがするもの。セイジが言ってた「疑え」ってあなたのことよね?何がどーなってるのか知らないけ
ど……
セイジくんにさわんないで!
[>>+19セイジに手を伸ばそうとするボタンの前に立ちふさがりとおせんぼ]
[何も分からないまま家を出る。
村をさまよううちに見知った顔――
消えたと聞いた人物も含む――に出会う]
え、っと……
一体、どうなってるんですか?
[遠慮がちな声で尋ねる]
―回想・あんころ餅屋の前―
[アンの声>>+42に]
アンも、そう思うじゃろ?
ボタン婆ちゃんで、別の何かじゃ。
何かは、わからんがの。
[見据えた「ボタン」がこちらに気づく様に、一瞬身構えるが。無邪気に響く声>>+41に、毒気を抜かれたように目を丸くする]
……たっ!
[頭を叩く掌と、一緒に飛んできた言葉は、紛れもなく]
……ボタン、婆ちゃん。
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