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ついてねえ……
[無情に閉じる扉を見て、男はもそりと呟いた。
よりによって魔女狩りにあうなんて思ってもいなかった。隣村まで配達で出かけることはあって、そこでは魔女狩りの噂も聞いてはいたけれど。
まさかこんな村まで裁判官がやってくるとは、思ってもいなかった]
そりゃあかわい子ちゃんには声かけたけどよ。
[村では配達業よりもそちらで有名になりつつあるが、それは女性に対する礼儀だと、男は思っている。
その一環で声をかけてしまったのが先ほどの裁判官で――まさかそのせいで魔女疑惑をかけられたわけではないだろうと思うが――現状、苦笑いしか出ない]
どうするか、なあ。
[手の中に残った鍵を放り投げ、空中で掴む。
とりあえず、ドーナツ状の建物の中を見て回ることに*した*]
― 法廷 ―
[円形の部屋の中心にある台に尻を乗せる。被告人席だか証言台だかしらないが]
ろくでもねえ。
[鉄格子がはまった牢屋を部屋と呼ぶ神経も。思ったよりも深刻そうな、この状況も。
苦々しく口を曲げることしかできない]
[法廷の出入り口を見る。
部屋の中は静まりかえっているが、外には幾人か、人の気配がした]
まったく。
[ぼりぼりと頭を掻く。
ついてねえよな。
ぼそり、と。
言葉を口の中で*転がした*]
[裁判官か、と問われた声の質には気づいてはいたけれど、視線を落として肩をすくめるのみで]
他に?
ああ……
[視線を扉の方に向ける]
疑われている者同士、顔を見ておくのも悪くないか。
[嫌でも顔を合わせることになるだろうから。返す言葉も独り言のような*声*]
ん。何人か連れてこられてるな。
[扉の開く音、閉まる時の僅かな振動。
現場を見なくても、何が起こっているかは想像に難くない]
あいつらの理由なんて、聞いたところで納得出来る気がしねえが。
[ミハイルから視線を逸らす。
それは座っている向きにまっすぐ顔を向けただけではあったけれど]
――いねえよ。
[相手が飲み込んだ言葉を、意気込まぬよう、口にした]
少なくとも、俺は魔女じゃあ、ねえし。
お前は――
[疑問のような、確認するような、視線を向けた]
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