[1] 絞り込み / 発言欄へ
―自宅―
……魔女裁判?
[来訪者へ向けた瞬きは、
どこか場違いにゆったりとしたものだった]
本は、持ち込んでも良いの?
昨日の夜に読み切れなかった奴があるんだよ。
[悲嘆すらなく。
やがて、男は"裁判所"へと足を向ける]
―裁判所―
イルマ…?
[自分より少し先に到着したであろう、昔馴染みの娘の姿を認めた。同じくごく普通に村で生まれ育った男にとって、歳近い彼女はよく話をする相手であり]
君が魔女だなんて知らなかった。
魔法が使えるなら、
もっと早く教えてくれればよかったのに。
[真顔でとんでもないことを言うのも、いつものこと。悪意がないことは察してもらえるかもしれないが、感情が渦巻いている彼女へは少々無神経すぎる発言だったかもしれない]
冗談言ってみたけど、元気でなかった?
[怒られたが、反省はあまりしていないようだ。相変わらずのんびりと続けて]
そうだねぇ。
男でも連れて行かれることは結構あるみたいだ。
お客さんからの話だけどね。…噂は、よく聞く。
[最後は、やや神妙な顔つきとなった]
僕は変わり者って言われているしね?
イルマこそ、どうして疑われたんだろう。
…でも、大丈夫。なるようになるよ、きっと。
[根拠のない慰めの言葉と共に、娘の頭を軽く撫でた]
もし魔法が使えたら、1日の長さを3倍くらいにしよう。
ずっと本を読んで暮らせるね。
[真面目な顔で頷く。本当にどうでもいいことにしか、使わなさそうだった]
自分以外の誰でもいい、っていうのはあるかもな。
誰だって、裁判なんて受けたくはない。
嗚呼。でもいいことが一つだけあるよ。
普段は入れない法廷を見物できる。
[撫でる手を止めると、思いついたようにそう嘯く。実際は見物、どころでもないのだが]
折角だから、覗いてみよう。
じっとしていても、きっと気が滅入るだけさ。
[1] 絞り込み / 発言欄へ