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あれ…?
[箒を渡してくれた少女の姿が見えなくなって、辺りをきょろきょろと見回している。]
ふなー…
[フナムシに食べられちゃったのかもと、悲しい想像。泣きそうな顔で椅子の下やゴミ箱の中を探している。]
[両手をちょこんと机の上に乗せ、紙を覗き込む。]
ぎん…しろ…
[書かれた文字を読んだ。だがその文字と人の姿とが結びつかない。首を傾げていると、猫が背中から肩の上へとよじ登った。]
[いつの間にか眠ってしまったのだろうか。目を覚ますと夜が明けていて、空には幻月は見えず、]
かなしぃ?
[宿舎を取り巻く空気が悲しみに覆われている中、故人の記憶がない自分に仲間外れの感情。すぐ近くで眠る猫を抱き寄せて、ぎゅっと。]
ふね?
[窓から外を眺める。迎えの舟の姿はないだろうか。島にどうやって辿り着いたかを考えると、頭の奥がずきりと痛み、思わずうずくまった。]
しま…
[彼らはここの住人ではないのだろうか?取り残された人々を不思議そうに眺める。上着の人が玄関口に見えれば、宿舎から外へ向かおうとする。]
…へぃき?
[心配されると、振り返って見上げ]
へぃき…
[痛みはすでに引いていて、一過性のものだからと笑いかける。礼を言うと、グンジの言葉の続きを、現実感を喪失したふわふわした感覚と共に聞いている。]
…そぅ?
[ライデンの言葉を聞いて、安堵したように笑う]
まぃ、ご?
[戻るべき場所がないのに、迷うって言うのかな?と首を傾げ、後ろ足で耳の後ろを掻いた。]
らぃど!
[エビコの言葉を聞いて、笑う。丸い瞳でエビコの目をじっと見上げたまま]
いきてる…しんでる、どういう、こと?
…みんな、ここに、いるよ?
[首を傾げる。かさかさと視界の右端をフナムシが通りすぎれば、それを追うように宿舎の外へと駆けていく]
[出て行く直前、エビコにかけられた言葉には、同意を示すように頷いた。
外に出てから、考える。知っている。死んだ人は、動かない。死んだフナムシも、動かない。]
じゃあ…しんだと、きづいてない、ひとは?
[動くの?動かないの?と、後をついてくる猫を抱え上げて目線を合わせて問う。猫はただにゃーんと鳴くだけ。]
[いなくなった人を探し、いつしか海の前。対岸に目を凝らすと、陸地の姿がぼんやりと浮かんでいる。]
…みぇる
[とてとてと歩いて近づく猫。背中をよじ登って肩の上へ。]
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