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[めまぐるしく切り替わる視界。ノイズ音。
ザッピングに慣れきった都会の若者が観ている
テレビのような。選ぶ意志の感じ取れる其れ。
一度固定された映像には、眼鏡をかけた女性と
白シャツの少年の姿が映りこんでいる。]
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[――端へ映る少年と乃木巡査は、
何度か顔を合わせたことがある。
ある旧家の土蔵、その格子窓越しに。
日毎に自転車で警らをする乃木巡査へと、
少年は一度だけぎこちなく手を振った。
然し、巡査が何度村の住民簿を捲ってみても
その家に少年らしき名は*見つからないのだ*]
[ノギの視界にはアンと赤い涙を流すホズミの姿があった。
視界ジャックに慣れて居ない為か、ノギの視界ジャックのザッピングはランダムだ。
ノギの視界を分割するように平行して視える他者の視界は移り変わり続ける。
ノギの視界、アンとホズミを中心とした視界の端に映るのは、村民の胡乱な眼差し。幾人もの手に武器が持たれており、]
―― 愛妻家ウミの視界 ――
[巻物が開かれる。
紙面には、流麗な文字と迷路のような不可思議な線が現れた]
『おじいさん? 準備出来ましたか?』
[視界は動き、一瞬障子が見え、『今行く』という声が響いた。
急ぐように視線は巻物に戻り、『二宮尊徳』という文字が注視され――]
[―――と、視界ジャックの対象が集会場から変わる。
教誨所の裏手に向けて移動する低い姿勢。抑えた呼吸。]
「…かくれるまえに わすれものをとりにいかなきゃ」
[水の中や布団越しに聞こえたような声。
ノギ自身はギンスイの事を然程知りはしない。
旧家から覗く顔。格子窓越しに見えたギンスイの顔は、感情を顕にしない人形のような顔だとノギは感じていた。
―――少年の名は住民簿になく、其れもまた、この村への不安と疑念を深める一つの要素だった。]
[ ざ ざざっ ざー ]
[その主を解さぬ視界へと瞬時、切りかわる。]
[途切れ途切れ、砂嵐の向こうに見え隠れした、村役場の光景]
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[赤い涙を流す美津保、上ずる早口の少女の姿。
その二名を切り替えた視界の中に認めた瞬間、
少年はその少女の視界へ自身の感覚をつなぐ。
――若い警官。
有象無象の屍人たちの他、瞳の主を確かめる。
赤い涙の滲みさえ見逃さぬつもりの…「凝視」]
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「知っている?」
[無邪気に笑う少女の姿が見える。]
――なにを?
[問い返す声も、また幼い]
「うふふ、知らないのなら。
まだ、教えられない」
―― 野良ネズミの視界 ――
ぴちゃん
……ぴちゃん
[滴る音。その液体の色は定かではない白黒の世界。
ほとんど光のない洞窟を、小さなネズミは歩いていき、人の気配を察知すると物陰に隠れるのだった]
「――手…みが…き…の。
招待…み…い。
結…す…みた…
あ…な奴、死…え…い…のに」
[綺麗に折りたたまれた便箋。
封書の中には、華やかに飾られた一通の招待状。]
「盛大に祝福されている最中に、
土砂でも隕石でも落ちてきて、
皆死ねばいいのにっ!」
[呪いの言葉を綴る女の声と泣き崩れて霞む、視界。]
[塩昆布にジャムを乗せたお茶請けを、
美味しそうに口にする家族を、
低い位置から眺めている。]
――……。
「みけも食べたい? 美味しいよ?」
[家族のひとりが、楽しげに塩昆布を差し出した。
ふい、と拒絶するように視線を逸らす。]
[ 目標をロストした男性は、のろのろと歩きだした。
どこへ向かうのだろうか、話は通じるのだろうか――屍人の中には人間としての意識を残す者もいると聞いているが。
ふと、よぎる考えがある。
もしも話が通じるのならば―――]
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