[森の中を歩く長身の男。眼鏡のレンズ、服や髪に、橙の光が反射していて。その手にはノートや本や布製の筆入れを紐で束にしたもの]
……迷った。
[男は一度立ち止まると、周囲を見渡してぽつりと呟く。革靴の底が葉を踏む音。ただ前へ前へと歩みを進め]
[そのうちに家屋の前まで辿り着いては、やや逡巡した後、扉をコンコンと軽く叩き]
――すみません。
どなたかおられますか?
[静かながら響く声をあげ。ようやく別の人影に気付き――雷鳴に小さく、肩を揺らした]
と、……今晩は。
何か……?
[ソラの方を見つつ返事をして。何やら怪訝そうな相手に、また首を傾げる。中から一人の子供が出てくると]
ん、いや……少し道に迷ってしまって。
ここのあたりで……
[何か問いかけるが、途中で忘れてしまったかのように止め。少々悩む素振りをみせ]
雷。
夕焼けだけ見ると、とても降りそうにないけれど。
これから一気に崩れるかもしれないね。
[レンの言葉に、空を見上げ]
客……なのかな?
お邪魔させて貰えるなら有難いけれど。
[途中言いかけられたのには反応しかけつつも、ルリに小さく頷いて]
……と。
私はフユキ、というんだ。
[名を名乗り、靴を脱いで広間へ*向かおうと*]
隣の家に囲いが……
……へー、かっこいー?
[広間に来ると、立ったままでネギヤの洒落に付け足して。ふと戸棚の方を見やり、滲む光に、少し静止。失礼、とそちらへ歩いていき]
……。
蝋燭? ……フユキ。
[手前に来ては、並んだ蝋燭の一本に目を留め。そこに刻まれた文字を呟くように読み上げる。幾らか思案するような間を置いた後に、その場から離れ]
ん? ああ、今晩は。
お邪魔しているよ。
[聞こえた声に立ち止まってそちらを向く。一人の少女の姿。軽く礼をし返し]
……地球を、七回半。
[呟かれた言葉を復唱した。黒板を眺め、書かれた文字と、ゾウの絵とを見]
リウ、ね。
[少女の名をぽつりと繰り返し]
ご主人様になった覚えは、ないね。
多分。
[戸棚へ向かうのを見ながら言い。少女、リウが蝋燭に刻まれた名を読み上げた後、続けた言葉に]
ああ。何か学校のようだね。
[膝の上に置いていた束から筆入れを抜き出すと、卓の上にそっと*置いておいた*]
羊羹を常備というのは……
逆に怪しくないかい?
[レンの主張に、問う形でぽつりと。
ソラに声をかけられれば]
犬のおまわりさん。
……この辺りに犬の交番はあるかな?
あるなら道案内を頼めるかもしれないね。
[こちらも割と真面目な調子で返し]
[体育座りをするリウの姿に、座ったままながら、心持後ろへと引いて]
……いや、怖い。
ある意味、というより、そのままの意味で。
[素直な感想を述べる]
[交番がなかった、と聞くと]
それは残念。
……
[言った後、リウの発する輝きに、さっと目元を手の甲で覆い。それから何か対抗するように自分の眼鏡の端を掴むと、光を反射させてみて。白い逆光。ぴかぴかり]
怖い話は好きだよ。
ただお化け屋敷は少し苦手なんだ。
とはいっても、まあ、嫌い、ではないね。
[非常にショックを受けている様子のリウに、答えてから、フォローするよう。
ネギヤを褒めるルリに頷いて、その背を見送り]
[ボールを取り出すソラには少し驚いたように。それを授けられると、手にしたままでじっと眺め、やや思案]
これを……
……ベターな使用法としては、転がす?
[ソラがボウリングシューズを取り出すのにも、再び少々驚いたが。リウが口の中からピンを出したのに]
……
[思わずボールを取り落としそうになった。何か神がかり的なものを感じた]