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殺しはしたことないって言ったね。
ボクもだ。だけど、ここには、警察が嫌いな二人しかいなくて、なんだかわからない路地の隅。
そして、やったことないことは、何だってやってみたいのがボクなんだ。
[女の元から連れてきた、銀のナイフを右手に握る。
光のささない薄暗さ。刃は光を弾かない。]
ボクは、キミを殺してみたい。
[右手を振り上げる。このまま降ろしてしまえば、女とは反対側から、首を貫くことになりそうだ。]
[やめろ、を聞けるなら、こんなことはじめからしない。]
よかったね。
ボクが殺したみたいで、間違いなくなるよ。
[さあ、そのひくつく喉元に。]
おそろい。
[皮と肉を裂く手応え。赤いものが溢れる。心地よくて、自然と笑っていた。
首後ろにナイフを刺されたあの女。知らない女のような気がしたけれど、勝手に死ぬなんてそれこそ勝手な真似をしてくれたと思っていた。
これで、おそろいだ。]
ねえ、痛い? 喋れないかな、駄目かな、どう?
[嬉々とした声が、語りかける。]
[首に刺さったナイフから手を離して、満足気に唇を舐めた。
これは、いい。誰かが自分の手で壊れていく。興奮しすぎて、思わず欲情しそうだ。]
こっちも、使っちゃおう、かな。
人のナイフって、なんだかやっぱり、自分が殺した感じ、しないし。
[ストールの下、いつもずっと持っている、大切な。
刃渡りの長い、大鋏。]
ナイフ持ってるとさ、怒られるけど。
ハサミ持ってる分には怒られないの、変だよね。刃物には違いないのにさ。
だからボクはいつか誰かを殺すときにはこれにしようって決めてたんだ。
ハサミだって人は殺せるって、ちゃんと証明できるでしょ。
[大きく開いて、胸元へ振り下ろす。
抵抗されれば、位置はずれるだろう、けど。]
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