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―「家」の内―
[男が伸ばした手で冷たい家具に触れた時
足元に柔らかい毛の温もりが絡まった。
分厚い包帯に遮られた視線を向けてから、
腰を屈めそちらへと手を伸ばす。
ぽふり、と、触れた高い体温は、
トナカイ橇と共に進む犬橇用の犬の生まれたばかりの子。
ぱたぱたと振られる尾の音は、
雪に音を奪われた場では耳に届く。
擦り寄る頭をそっと撫でてやった時、
外から聞こえたのはアルマウェルの足音だった。]
[用件を伝えたアルマウェルが去ってから、
男はまた家具に触れる。
呼ばれた先はテントらしい。
またひとつ、あん と鳴いた子犬の頭をぽむと柔く叩き、
立てかけられたトナカイの角と蹄で作られた長杖を手に取ると
足元を確かめながら、慣れぬ「家」から外へと出た。
引かれた分厚い布に あん と鳴く子犬の声が閉じ込められ
ざくりと踏む雪音は、長老へのテントへとゆっくりと進んで行く*]
― テントの中 ―
[狼の遠吠えが聞こえたのはいつだったか。
赤いオーロラが見えた時さえ、空を睨むように見上げただけで小さく息を吐いて自分のやるべきことを成し。
ほどなくして、狼を操るものがいると告げる長老により此処へ来たのはいましがた。]
よぉ。
[中で一番に見たものは、出入り口を見ていたらしきビャルネ。
にこりともせず短く告げる挨拶を置き、出入り口の近くの位置に腰をおろし、やがて集まるだろう面々を確認していくの*だろう*]
―― 長老のテント ――
なぜ、すぐに襲ってこないんだ?
[ぐず と洟を啜る音がして、その後に声。]
あの忌まわしく取り囲む狼どもは。
いや、襲ってきてほしくはないが。
[カウコがやってきて程なく――――
テントの中央で燃える焚き火の向こう、
毛皮の小山と見えたものがごそりと動いた。]
長老さまが、
あやつる者が在る所為だと仰せなのも頷ける…
[テント上部の煙出しへと、煤が昇りゆく。
被った毛皮をずらして顔を見せたのは蛇遣い。
数年前――夏の興行へ訪れたこの地が気に入り、
住み着いた者。今でも、冬の極寒には慣れない。
この季節、浅い冬眠に入っている相棒の大蛇を
冷やさぬよう、首元へ巻いて常に温めている。]
あんたはどう思うね? 白髪頭。
[装飾的な杖を抱き座るビャルネへ水を向ける]
[ぐず とまた鼻先に音を立てて身じろぐ。
淡褐色の毛皮の中で、両腕を組み直しながら
焚き火の焔越しにカウコを上目遣いに見遣った。]
あの小洒落た帽子の兄さんは
まだ外にいたかい、カウコ。
いい加減、戻らないと足から凍りそうだが。
[テントの外へ出たままのラウリを指す態で、
そう口にする。自分で呼び戻しに出る気も、
カウコやビャルネに頼む気もまたない様子。]
あたしはトナカイの氷り脛を割って、
骨髄を啜るのはだいすきだけどな。
人間の脛へしゃりしゃりに
霜柱が立つのは、考えるだにぞっとする――
[ずー。と鼻先の音がひときわ長く漏れる。
流石に面映かったのか、
蛇遣いは誰にともなく肩を竦める。
ちらと見た供犠の娘が、僅か笑んだ気が*した*]
狼……ねぇ。
[使者の語る話に、ふうと深い息を漏らす。
そうしている間も狼の遠吠えは止まない]
(状況は分かるんだけどね)
(だけどトナカイたちをほっとくわけにもいかないじゃないか)
行くのは行くからさ、先に行っててくれないかね。
こっちにも準備ってもんがあるからさ。
[容疑者扱いされるのには納得いかないけどね、という
言葉は心の内にしまったままで]
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