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ああ、うん。
[言われた通り、鍵は開けたままにして。
万代の後に大人しくついていく]
教える?
……ああ、子供たちにか。
万代さんも大変だよね、遊び盛りの相手じゃ。
[教室から出さなくても大変なのに、彼女は外で運動させる係なのだ。
自分以上に大変だろうと思えた]
たんすの悪魔……。
[万代の独創的な表現についていけず、からかわれっぱなしにからかわれる]
そうめんに、漬け物。
うん、充分だよ。ありがとう。
[この際、贅沢は言うまい。
それに、先程の握り飯のお陰で酷く空腹という訳でもない]
……ご馳走様でした。
助かったよ。
[食べ終われば、礼を言って素直に出て行った。
村の老人たちが見ていたら、きっと非難轟々だったことだろう**]
―翌朝・自宅―
……うーん。
[自宅の布団で目を覚ますと、一度伸びをしてから、しばし寝転がったまま天井を見詰める]
あのまま帰ったのはまずかったかな?
[夜に娘の家を訪問する、というのは、つまりそういう意味合いを持つのだろうと今更考える]
ま、いいよね。万代さん何も言わなかったし。
さて、仕事仕事。
[言い訳するかのように独り言ちると、今日の時間割りはどうだったかなと考えながら、寝床を抜け出した]
―道端―
[支度を終えて、家から抜け出す。
相変わらずの熱さに手団扇しながら歩いていると]
あれ……ホズミさん?
何やってるんだろ。
[どこかに向けて腕を振っている。
その相手が振り返す様子がないため、奇妙な光景に見えた]
おはようございます……?
[戸惑いながらも、挨拶の声を掛けた]
アンさんが?
[ホズミにつられて姿を探すが、既にその場を離れてしまったようだ]
逃げられちゃった、か。妙な話だね。
栂村さんを怖がってるとか、そういう訳でもないだろうし。
何かあったのかな……。
[首を傾げるばかりで、答えは出て来ない]
そうですよねぇ。
[アンが向かったと思しき方向を見詰めてから]
氷? そりゃ食べたいですけど、仕事がまだ……
[言いながらも、見えない引力に引き寄せられるかのようにホズミの後を追う]
そうですね。
ちょっとは涼まないと、体が持ちそうにないし……。
[氷のひんやりした感触を思えば、それを運ぶくらいはお安い御用だった]
あ、生贄ですか?
そういえば、まだ聞いてなかったな。
[集会所に居た年寄り連中なら知っていたかもしれない、と]
え、誰を、って……。
[訊ねられて、困ったような顔をする]
……ネギヤさん、かな。
柔らかそうというか、脂が乗ってそうというか。
[彼の餅肌を思い出しながら答えた]
ホズミさんは、食べたい人とか居るんですか?
ひみつー、ですか。
[誤魔化された事に釈然としない顔をしたが、ノコギリと紐を手渡されて]
はいはい。
氷は少し余分に食べさせてくださいね。男なんで。
[お駄賃を要求しつつ、氷を探しに洞窟の中へ]
それなら取っておいて、後で冷たい水として飲みますよ。
[見付けた氷をぎこぎことノコギリで切り取っていく]
昔? どうなんだろう。
砂糖も貴重だったんだろうしね。
[今も贅沢に使える訳ではないが]
他の飲み物を冷やして固めたりはしてたのだろうか。
……よいしょっと、こんなもの?
[切り出した氷を指差す。
小振りだが二人で食べる分くらいはあるだろう]
…………。
[放置された氷に紐を巻いて手提げ状にする]
こんな洞窟がいくつもあるとは思えませんしね。
[ホズミに同意していると、うなじに冷たい感触]
うわ!?
[思わずびくっとする]
こら、ホズミさん!
[された事を理解して声を上げるが、相手は既に逃げ出した後]
もう……からかわないでください。
[ぶつぶつ言いながら、氷を持ち上げた]
わかってますよ、そんなこと……!
[氷を提げて、ホズミの後を追う。
荷物の重さが邪魔をして、なかなか追い付けない]
まったく、いい年してはしゃがないでくださいよ……。
[時折こちらを振り返る様子が、からかわれているようで余計に癪だ。
それでも折角の氷が小さくなるのも嫌なので、歩調を上げる]
や、だからそういう所が子供っぽいって――
あ、栂村さん。
[ホズミとの言い合いは栂村の姿を見付けた所で中断した。
彼女に訊ねられて頷く]
そっか、元々栂村さんがアンさんを探してたんだっけ。
[そう呟いて一人で納得した]
……もはや何も言う気はありません。
[ホズミの『ふーんだ』に諦め顔をする]
逃げられた……。
やっぱり、いつもと様子が違うんですか? アンさん。
[先程ちらりと見ただけではよくわからず、栂村に訊ねる]
ああ、氷は良かったらどうぞ。
[栂村の返事があれば、溶けないうちにとかき氷の準備を始める*だろう*]
―木陰―
[村に一台しかない氷削機を借りて来ると、適当な木陰に入って氷を削り出す。
器の上に、氷片がはらはらと積もって行く]
はい、じゃあまず、ホズミさん。
[器に小さな山が出来た所で、ホズミに手渡した。
ついで栂村の分を作り、最後に残りを全て自分の器に削り落とす。
他の二人よりやや大きな山に、満足げに笑んだ]
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