おかあさーん、その服はお洒落着洗い専用の洗剤で洗わないと縮んじゃうよ…
って何で洗濯っ!!
[自分の寝言で目が覚めた。
近くで洗濯機ががらがらと音を立てて回っている。]
[壁の仄かな光に映し出される、幾つか並んだ洗濯機。
壁には【洗濯部屋】の文字。]
えーっと、今度は私、リネン室に放り込まれたの?
[まだ少し嗄れて痛みの残る喉をさすりながら、辺りを見渡す。]
また誰も居ないし…。
[人影どころか物音まで聞こえない。]
取りあえず洗濯物、脱水にかけた方がいいわよね。
[二層洗濯機の洗濯層から、洗濯物を脱水層に移してダイヤルを回した。<40>分]
[二層式の脱水層。洗濯物の入れ方がまずかったのか、暴れ牛のロデオみたいにガタガタ跳ねている。]
そう言えば…。寝てる時に難だかネギヤさんの声を聞いたような気がするんだけど…。
気のせいかしら?
それに青い部屋にモールス信号送っていた人とか、誰だったんだろうね。
[40分掛かった脱水も無事終了。]
脱水したからには、干さないとね。
それにしても、みんな無事なのかなぁ?
[部屋に備え付けの洗濯竿にかけて行った。
勿論、排水パイプから別の部屋に水が漏れ出しているかもしれない危険性は、全く気付いて*いない*]
[洗濯物をひと干し。
いい汗掻いたと、額を拭う足許が冷たい水浸し。]
え? えぇー?!
なっなんで?
[ロデオのように激しく回しすぎた洗濯機の所為だとは、未だ気付いていない。]
と、取りあえず水、水を何とかしないとっ!
[慌てて部屋の中を漁る。
洗濯籠から見つかったのは、なぜか[黒マント]。]
あ、案外普通のものが見つかったわね。
よかったわ。
というかこの黒マント、ネギヤさんが身に着けているのかしら?
だとすると、キクちゃんの勘も強ち間違ってなかったってこと?
[確か「こっそり覗いて真実を確認して、悪いひとを改心させる」って言っていた筈。
家政婦虎の巻に書いてあるとも。]
でもネギヤさんほどのもち肌と体型なら、黒マント身に着けてもすぐ身元が明かされそうだけどね。
[それ以前に黒マントを纏って何をするのかが、謎。]
ま、判らないことは横に置いておいて。
えっとこれで排水ホースを固定して…
ってえ? えぇ!?
[がちゃがちゃ排水ホースを弄っていたら、急激に増した吸引力。]
しかし、ネギヤさんの家って変よね。
お金持ってるのに洗濯機が未だに二層式だとか。
[他の洗濯層を覗いてみた。
何故かヘビや冑や[手榴弾]が、ガラガラと回っている。]
ところでみんなちゃんと無事なのかしら? ネギヤさんは?
[じゃぶじゃぶ。足許はぬれていて気持ちが悪い。]
うぅ、足が気持ち悪い。
靴下変えよう…。
[洗い終わった洗濯物の中から靴下を取り出そうとして、ヘビを掴んでしまう。]
ひゃぁっ!
[さっき洗濯層で見かけたヘビはおもちゃのようだから、多分これもおもちゃだろうが、見たのと触れるのとでは勝手が違う。]
[取りあえずゴム手袋をして拾い上げていた手榴弾を、思わず放り投げてしまった。]
あっ! どうしよう?!
ピン抜けちゃったしっ!!!
本物かどうか判らないけど、
床に穴を開けるのに使えるかなっって思って――*