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[屋内にも関わらずかじかむほど寒い部屋。
四つの遺骸が並ぶ霊安室と貸した場所。いつの間にいたのだろう。そこに薬屋が佇んでいる。
言葉を捜すかのように、何を言えば全く思い浮かばないように]
……何だろうな。
[やっと、それだけを言った]
――人を。人を探していてね。
見つけたところだ。きっと、見つけたと思う。
[名を呼ばれても振り向かず、だがナオに答える。
薬屋は上着のポケットから手を出して、そっと人型を包む毛布をめくった。その顔を見る。
女だった。大人しそうな顔の。男の手は震えている。男は自分のそれに気づかずに、亡骸の頬に触れる]
……何だろう。苦しい。とても苦しい。
[震える指でゆるゆると他の者の毛布もめくり、亡骸を確認する。乃木。そしてスグル。
薬屋は自分の震える指に気づいて、震えをとめるようにその指を噛む。ぶつりとかすかに肉を噛みきって指を離す]
自分にここまで反吐がでそうになることもないな。
[疲れたように言うと立ち上がった]
[ナオに優しい言葉をかける余裕もなく、出て行こうとして、思い出したように一つだけ言う]
乃木の意志は私が継ごう。
[少なくとも、そうしようとして死にたいものだ。
そう付け足して、*その部屋を出た*]
――乃木。
[すぐ傍にいるように、死んだ男の名前を呼ぶ]
ここに怪物は存在するのか?
怪物はどんな姿をしている?
願わくば何かしたい。
ならば何をすれば良い?私は何を手伝えば良い?
判らない。私には。
[口惜しそうに目を瞑る]
君のしようとしたように殺せば良いのか。
それでは何を殺せば良いのか。
[判らない。ともう一度、ただ悲しそうに言う]
[男はゆるゆると立ち上がる。疲れきった老人のように]
『皆が無事いれるように手伝いたい』
そう言った。
『気に病みすぎなくて良い。大丈夫だ』
そう言った。
[――そう言ったのだ、と。
血を吐くような声で独りごちながら、歩き出す]
[歩きながら、男は茫洋と考える。
狂える開拓者となればいいのか。
手を取り合って、少なくとも正気を保つか]
――針は何だ?
[正答がある保証など微塵もない問い。
薬屋は呟く。*少なくとも餌は幾らでもあるに違いない*]
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