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―法廷―
感情を殺さないといけないということは、
心の底には迷いがあるからなのかもね。
[女裁判官の話題に、小さく頷き]
ユノラフさんの口説きに僕達の命運がかかるのか。
[軽口には大真面目に答える。
静かな会話の時間は長くは続かず、やがて廊下の奥からやかましい足音が響いてきた]
誰? 新しい容疑者さん?
[惚けた調子で呟いていたが、現れたのは厳つい男の裁判官だった。曰く、ドロテアと連絡がつかないがどうしたのかと、責め立てる口調で怒鳴る]
そんなこと言われても。皆、ここで話してたよ。
[それから暫し、裁判所内を見て回る。
…人気のない場所で静かに永遠の眠りについた件の女裁判官が、発見された]
イルマ、見ない方がいい。
[少しだけ声を固くして、彼女の眼を手で覆うようにした。
裁判官の男が軽く検分し、死体に外傷がないことを確認する。そして、声高に叫んだ]
『これは、この中にいる魔女の所為だ!』
[明日の朝までに一人、この中から"魔女"を見つけて突き出す様に、と。冷たく宣言して、彼は去っていく]
男相手じゃ、口説けないね?
[途方もない様子で、ぽつりと]
一人で、許してくれるのだろうか。
…美味しいご飯にはありつけそうもない。
[やはりこの中に魔女がいるとは思えなかった。エリッキの話が本当なら、此処にいる全員が、きっと。
いつも通り淡々としているようで、流石に困惑の混じった声が零れた**]
…突き出したところで、最後は全員"同罪"かも。
だって今までは、そうだったんでしょう。
[これまでの裁判による処刑が、どのような順番で行われたかは知らないが]
仮に突き出すとして、誰を、―――…。
[いつも飄々としている男の顔が、珍しくはっきりと困惑に歪む。言葉の続きは、言えなかった]
…自分が魔女だって? なんで、そんな。
裁判官が納得するような"魔女"を、演じるってこと?
でも、それじゃまるで。…生贄だ。
―――やっぱり、裁判官のしちゃおうか。
[乱暴な結論にたどり着きつつ、緩く拳を握る。
脳裏に一瞬浮かんだのは、"持ちかけられた"取引のことだった。密告すれば、助けてやると言われた。信じたわけではない。誰にも死んでほしくはない。…死にたくは、ない]
――…どうにかなると思って、言ってると思う?
[ミハイルへ向ける表情は、暗い。エリッキはともかく、この本屋が荒事に慣れている筈もない]
僕だって死にたくは、ない。
[此処に来たとき、何処か楽観的に呟いた言葉を思い出していた]
…どうすれば良いのだろうね、イルマ。
なるように、なりそうもないよ。**
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