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魂を狩っている間は、成長もするしちゃんと大人にもなれるって彼は言ってた。
もっとも、もうひとつの代償で黄泉還る前の記憶も少しずつなくなっていくとも言ってたけど。
だからなのかな、その夜を境に彼は病院から消えてしまったの。
わたし宛の書置きだけ残して、ね。
[ふう、とため息を吐いて]
すごく長くて退屈な話、よね。
でもこれ、必要な話なのよ。
須藤先生が黄泉還りなら、もしかしたらあの日わたしの前から消えた初恋の人と、同一人物なのかもって思ったから。
…顔もだけど、雰囲気も似てたんだもの。
でも、結局聞きそびれちゃった。
もしそうなら、ちゃんとわたしの想いも伝えなきゃいけなかった、のに。
[初恋の人と同一人物であってもなくても、須藤先生のことは好きだったけど。]
結局、わたしは好きな人に二度も置いてかれちゃったみたいね。
…ふふっ。
それから、かな。
おばけとか、オカルトとかそういうの全然だめになってて。
退院してからもずっと、あの時彼と食べていた菫の花の砂糖漬けを持ち歩くようになったの。
わたしは彼のこと、忘れたかったのかな。忘れたくなかったのかな。
…ちょっと、今でもわからないの。
[ここまで語り終わると、すっくと立ち上がり。
ころころと鈴を鳴らすような声で笑い出す。]
…なぁんて、ね。
信じた?信じちゃった?
うん。別に先生嘘は言ってないの。
少なくとも、わたし以外の皆にとってはさっきの話が真実ってことになるわ。
鬼の正体は黄泉還りだし、偽汽車は黄泉還りを創り出した諸悪の根源なの。
でも、わたしは気付いちゃったんだ。
[くすり、と愉しげな笑みで]
わたしたちがいるこの世界自体、ぜんぶ嘘なんだって、ね。
わたしたちが笑って怒って泣いてるのも、全部うそ。
偽汽車も、鬼火も、死んじゃったみんなも全部ニセモノ。
たぶん、わたし自身もニセモノじゃないのかな。
どうやって確かめようかしらね。
…偽汽車のどこかが書割りになってて、蹴り倒せるんじゃないかって思ってるんだけど。
誰か試してみない?
[車両の扉付近へ行き、とんとんとノックして見せながら]
先生はかよわいおねえさんだから、男の子がやるべきだと思うんだけどなぁ。
だからね、みんな悲しまなくていいのよ。
死んじゃったことになったみんなは、ダミーの死体と入れ替わって偽汽車のセットから出ちゃってるだけだし。
鬼火もCGか何かで出来てたんじゃないかな。
ちょっと製作過程見てみたいんだけどなぁ。
黄泉還り役か狂人役やってる子に聞けばいいのかしら。
[きょろきょろと辺りを見回してみる。]
今はいいけど、あとで教えてね。
先生、映画のセット見るの初めてだからわくわくしちゃうわぁ。
それにしても、ほんとみんな演技が上手よね。
わたしって、大根役者もいいところじゃないかしら。
ごめんねぇ?
血糊もすっごくリアルで先生びっくりしちゃったのよ?ほんとよ?
[服に付いた、赤黒く変色した血糊を払い落とそうとする。
結局上手くいかなかったけど。]
本物みたいな感じの色だし、お化け屋敷で使ったらとても臨場感があっていいんじゃないかしらねぇ。
市販されてたりするのかしら、これ。
されてるなら、こっそり買っていたずらに使っちゃおうかしら。
うふふ。
………ん。
そういえばクランクアップっていつかしら。
[座席へ行き、銀色の鍵巻き式懐中時計を取り出して時間を見る。
時間は三時くらいだが、夜なのか昼なのかはわからなかった。]
なんだかもう、随分長い時間此処にいる気がするんだけど。
そろそろ残った黄泉還りをさくっと処刑して気持ちよくクランクアップにしましょうよぅ。
[その場でううん、と伸びをする。]
そうしたら、みんな戻ってきてお疲れ様会の流れなんでしょ?
須藤先生ってば、別れ際にあんな殺し文句言うなんて反則だわ。
…ふふっ。
[須藤が去り際に残した台詞を思い出し、思わず頬を赤らめる。]
全部終わった後、何処かへ二人きりで飲みに行きましょう…なぁんて誘っちゃおうかしら。
うふふふふ。
やだわぁもう。たのしみ。
[黄泉還りのモノガタリを語っていたときとはまるで別人のように、歩き回ったりはしゃいだり。
悲劇のヒロインというよりは、むしろ道化のような様相で。]
…あ。
[ぽん、と手を打つ。]
でもなんか色々と先生の手持ちの品物壊しちゃったのよね。
撮影が終わったらきちんと同じものを買って返してくれるのかしら。
やだわあ、心配。
あの水筒、すごく気に入ってたのになぁ。
[ちらりと座席に置き去りのままにした水筒を見る。
正直、もう使い物にならないだろう。]
でも、ねえ。
…あの警笛聞いた瞬間のあれだけは、どうやったんだろうって気がするわね。
日本の映画技術も相当進化してるのかしら。
[んー、とその場で腕を組んで考え込み]
集団で気絶して運ばれた、とかでもないと思うのよねあれ。
わたし、別に中で寝転んでたわけじゃないし。
それにしても製作者の人、趣味悪いわよぅ。
わたしホラーとかおばけとかぜんっぜんだめなのに。
そういう人材をこんなところに放り込むのおかしいでしょ、そうでしょ?
[と、誰にともなく呟く。]
わたし、ほんっとうに怖かったんだからね!
車内のセットを歩くたびにがたがた変な音したし。
時々窓の外に火の玉みたいなの飛んでたし!
寿命が何年あっても足りないのよ?やだわぁ、もう。
[ぎゅう、と。
須藤に借りたままの上着を抱きしめる。]
ぜんぶ終わったら、ちゃんと洗ってクリーニングにかけて返さなきゃ、ね。
しわくちゃにしちゃって申し訳ないわぁ…これ、そこそこ値が張りそうなのに。
…んー…。
[須藤とのやりとりを色々思い出して、赤面。]
…これが全部お芝居だったのなら、もうちょっと大胆に行動してもよかった、かなぁ。
ううん。
[正直、思い出すだけでも色々恥ずかしい。
思春期の女の子の方がもうちょっとまともなアプローチを出来たんじゃないかと思うくらいに。]
…あのね。
おわったら、ちゃんと迎えにきてね。
さびしいから。
[わたしは彼の遺体を見ていない。
だから、全部終わったらちゃんと迎えに来てくれる………よね?]
/*
@・x)ノシ(ほーいもろもろ確認。
ちょ、占い結果が予想外すぎてふいた。
成瀬さんが残りの主体FAだとおもって遊びすぎたじゃないかどないしよう。
とりあえず弓槻君吊っとく?とか言いつつ今までの流れは読み直しておくよめえめえ。)
…それぞれの結果を確認したわ。
正直びっくりしてる。
あと…わたしが残りの黄泉還りだとか言うのなら、それなりの根拠は提示してね?
[空いた座席に座り、仮眠を取る。**]
[書置きを、ボイスレコーダー横へ]
▼寺崎君 妥協で▼弓槻君はあり
二度目の襲撃が通っていれば一番得をするのは寺崎君。
霊能者は鷹野の潔白を示し、寺崎の心証を上げた。
占い師不在により寺崎の色は不明に。
勝ち筋は占い師を抜き、偽装ライン(寺崎―三枝、寺崎―鷹野、須藤―成瀬(須藤―わたし?))を創り、偽装ライン利用の心証操作と推定。
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