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―庭―
…………、――――――。
[中庭で、草陰に落ちた髪飾りを見つけた。よく知ったものだった。拾い上げてじっと見つめる。虚ろな目で、見つめている]
……いたい。
[左の手首が赤く腫れていた。一応、裁判官とやりあってみたのは本当らしい。悲しすぎるほどあっさりといなされたが。
エリッキとイルマは死んだ。どちらも男の所為で死んだ。何をしているのだろう。
何をしているのだろうか、僕は]
ユノラフさん。
[声がかかり、伏し目がちに振り返る。虚ろな瞳を除けば、いつもとあまり変わりない淡々とした表情で]
ぼくは、――…ぼくは。
[けれど微かに声は震えていた]
ねえ。魔女と人殺しって、どちらが悪いんだろうね。
[口許に漸く浮かんだのは、歪な笑み**]
ミハイル兄さん。
…そうだね、二人とも死んでしまった。
[エリッキの遺品は見当たらなかった。手にした髪飾りに一度視線を下ろすが、挨拶を交わし終えても彼からの視線は向けられ続けたまま]
なぁに。
[何処か間延びした声で呟き、見つめ返す]
―――――…。
[隠し事はないかと、問われ。
そういえばミハイルには昔から隠し事ができなかった。考えていることが表に出難い性質だから、親にすら何を考えているか分からないとよく言われていたが。彼には、悪戯も悩みも、何となく見抜かれていた気がする]
かくしごと?
嗚呼、そうだね。例えば。
[短く、息を吐く。もう笑みが浮かぶことはない]
…何言ってるの。
証明なんて、必要ないよ。
ただ、指をさせばいいだけさ。僕が魔女だって。
兄さん、言ってたじゃない。
魔女が見つかれば、此処から出られるかもって。
[淡々とそう言って、ユノラフへも視線を向けた。同意を求めるように]
魔女っぽいって、どうすればいいんだ。
[独り言のように零す]
どうせなら、最初からこうすれば良かったんだ。
そうすれば二人も死なずにすんだかもしれないのに。
イルマは優しいけれど。
…優しいけれど、きっともう、許してくれない。
[感情の籠らない声。嘆くような言葉。手にしていた髪飾りが、再び草むらに落ちた]
兄さんは魔女じゃないさ。
[呻く姿に、緩く首を振る]
ユノラフさんは、人が良いから。
謝れば許してくれると、思っている。
[神妙な顔でそういって。向けられる視線を見つめ返す]
…僕だよ。イルマを殺したのは、僕。
死ぬのが嫌ならだれか選べって言われてね。
思わずイルマの名前を言っちゃった。
酷い話だよね。昔馴染みで、
変わり者の僕とも仲良くしてくれていた彼女をさ。
[まるで他人事のように、訥々と]
自棄になっているのかな?
もう、よく、分からない。
僕は兄さんにも、ユノラフさんにも、生きてほしいよ。
単なるわがままだね。甘ったれだ。
[静かに空を仰いだ]
でも、仕方ないね。僕は魔女だから。
[声の震えは、努めて気づかれないようにした**]
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