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[パチリと火の爆ぜる音。
ドロテアを連れた列が進むことも今は知らぬまま。]
……――寒い。
[呟くほどに、凍えてもいないのに。
気まぐれに鏡のある方向に目をやるも、見にいかず、ただ零したものは嫌気のない苦笑。
やがて立ち上がり、帽子と上着を着込むと外へと。]
― 小屋の外 ―
[外に出て、周囲を見渡せば遠く見える灯にも気付こう。
その中にドロテアが居るかどうかまではわからずも、細めた目は複雑に揺れる。]
役立たずは、俺か――。
[自嘲めいた声。
歩みは灯の向かう先に向かわない。
さくり、と雪を踏み、向かうのは人の居そうな場所。]
[ふらり出歩けばビャルネ達の姿が遠くに見えようも、彼の家の前だと知れば何とはなしに近づくことはなく。
ヘイノが群れから離れるには暫し目を留めるもそれだけ。
目が合うようなら片手の一つも振るだろう。]
――何も、進まないな。
隠したまま引き出すなんざ出来ないだろうが
……其れ以前の問題だ。
[やれやれ、と息を吐き、贄の娘を想うも刹那。
足だけを前に進めながら、赤い空を見た]
――凶兆の徴と知らなければ綺麗なのかもな。
それこそ、ヨソの人間や子供なら。
[流れて来たイェンニの声には唐突に声をかけ。]
この状況で"歓迎"ってのは些か想うこともあるが。
[此処へ来て長くは経たない相手の意図ははかりかね。
他方で聞こえた特徴的な足音――否、杖の音だろうか。
鳴らない杖を持つのはマティアスだろうとあたりつけ。]
[相手が見開いた目に、驚かせたと知るも謝罪はなく]
悼んでも儀が止まるわけじゃなし、
ドロテアはドロテアの出来ることをするだけだ――。
[答えは否定を滲ませるも割り切れてはおらず。
赤が好きだと言う相手の様子に特に咎める色なく聞くけれど]
血のようだから好きってか?
[帽子をつまみ、少し深く被る。
赤を血と結びつけた上で好きと言う相手をじっと見やり]
そう。
「赤」が好きなことについては何も。
ただ血のようでと言ったことが気になっただけだ。
[ドロテアの儀式に期待を寄せることなど知りもしないが。]
疑える、とはまた挑発的だな。
信じられる人間と、疑わしい人間なら探してる。
が、疑える人間探しにゃ意味はないだろ。
少なくとも――俺には。
[他者の思考まで知らないから、否定は自身に留めて。]
[怖い、と言う相手を決して人相の良くない目で見やり、日の浅い者が言うことと多くは裡に留めず]
浅さ深さもあるし、別段悼みを強要する気もない。
――俺は俺の意志の元、悼まないことを決めるだけ。
[理屈だけでは済まないことなれそれは自分の決断。]
へぇ……ためらわないって?
どうやら根本的に俺とは違うようで――好かん。
民族の差なんてレベルじゃないだろう、とは
此処しか知らない俺には言えない。
[自分が疑われねば――告げる声に目を細め]
この群れを守る意志のない人間にとったら、
案外そんなもんかもな――。
とするなら、お前はドロテアをどう見てる?
[抵抗もせず、捧げられる贄の娘。
潔白と明かされながらも捧げられる贄の娘を。]
此処に来て1年も経たないヤツにあれこれ言っても
仕方がないだろう――それだけだ。
[相手からひしひしと感じるものが違和感と呼べるものなのか、それほど付き合いもなければはかりかね。]
好かんと言った直後にそう言うか。
ああ、そうだな――これは個人の差異らしい。
[伸ばされた手に自然と警戒しそうになるを抑え、触れられた手が離れれば直すだけ。
疑われるが逃げ延びる道と告げる言葉に相手を見て、紡ぎかけた言葉は飲み込んだ。]
望んでいるかどうかは――さて。
だが、 ……、在る意味想像出来た答えだったな。
[生きる意志のないものは死ぬべきとこともなげに告げる様子に言い表せぬ想いを添えて]
お前は、考えないのか? 生きる術を。
[どこか人ごとのように語る声を訝しんで問う。]
せいぜい気をつけるよ。
赤が好きだと襲われてはたまったもんじゃない。
[ご自愛を――去り際添えられた言葉に本気混じりの*返答*]
[イェンニと別れた後、すっきりとしないまま、改めて見上げた空の赤に、やはり自分は嫌いだ、と想う。]
刷り込みってやつかもな――
[目を細めて呟いた。
首元に手をあてる――脈打つものは命のしるし。]
狼使いかどうかってーよりは……もっと……
[形にならない想いは言葉には出来ず、途切れた言葉は誰が聞いてるわけでもなし途切れさせたまま。
暫し赤を見つめた後、祭壇の方向へはやはり視線を向けずにさくりと雪を踏む。]
[考え事をしていたせいか、マティアスにはすぐには気付かず、一拍遅れて相手の気配に気付くと視線を向けた。]
――カウコだ。
[何と声をかけたものかと考える間も一拍。
目が見える自分には相手の状況などわからないけれど、ひとまずは彼の前に居るのが誰であるかを明示すべきかと名乗るにとどめ。]
知ってる――ってーのは冷たいか?
[言いかけた言葉に自ら修正をいれる。
容疑者仲間、と言われれば そうだな と返し]
十名の中に狼使いが二人。
少ないんだか多いんだか――
[盲目と知れど"操る"という点において他者と差を作ることはなく。]
どいつもこいつも……
[ついたため息に邪気がないのはそういった扱いの方が落ち着くせいもあり、ついた悪態の片方にはトゥーリッキが含まれてもいるだろう。]
多い――かもな。
十人の中に二人――……情報がなきゃ
間違えた相手を"始末"する可能性が、高い。
"確率"があがっても"間違い"は帰ってこない。
まったくもって憂鬱。
[憂鬱と言うも躊躇いは感じさせず言葉を置き、自分からも少し距離を詰める。
触れようと想えば触れられる位置まで。]
[触れられるほど近づいたとて触れることはなく。]
……――普通は?
お前まで、血が好きだとか言うんじゃないだろうな。
[過ったのは此処に来て1年と経たないイェンニの言葉。
"赤"が、色彩が好きだと言った。
聞こえなくなる狼の声――ゆっくりと瞬くだけ。]
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